カナリアが鳴いた
▼初恋の相手
 任務終わりの父を迎えるために、ブルーノと一緒に買い物に行ったときに買った服をクローゼットから出した。ブルーノが似合うと言ってくれたのだが、似合うと言ってくれたブルーノに見せるために着ただけで、一度しか袖を通していない。父は似合うと言ってくれるだろうか。
 今日の服はブルーノが似合うと言ってくれたものでコーディネートされている。鏡を見ながら感嘆のため息を吐いた。ここまで言うと、ブルーノが全ての服を似合うと言っているような気もするが、そうではないのだ。合わない時は「こっちの方がお前に似合う」と言って似合う方を持ってきてくれるのだ。私のことを考えてくれるところが好きだな、と思う。
 ドアの近くにあるソファーに座って父の帰りを待つ。任務が重なり子供の頃より会う機会が減ってしまったのは悲しいが、忙しいのはいいことだとブルーノが言っていたのであまり気にしないようにしている。ブルーノがいれば、寂しくないと言ったら笑って頭を撫でられた。
 大きなドアが開かれたので、ソファーから立ち上がり姿勢を正す。ぞろぞろと見知った人たちが入ってくる中、父の姿を探す。亜麻色の髪を見つけ、すれ違う大人たちに会釈をしながら歩みを進める。


「お父様」
「カリファ、久しいな」
「ええ、会えて嬉しいわ」


 両手を広げられたので、私は父の胸へと飛び込んだ。子供のようだと思うけれど、父と再会できたのが嬉しくて仕方ない。


「可愛らしい服を着ているじゃないか」
「ブルーノが選んでくれたのよ」
「ほぉ、ブルーノが」
「たくさん話したいことがあるの」
「たとえば?」
「そうね、初めての恋の話だわ」
「お前ももう恋をする年頃か」
「ええ、好きだわ」
「まったく、妬けるな」


 そう言って父は苦笑した。きっと私が恋をした相手が誰かなんてわかりきっているだろうに、話に付き合ってくれるなんて父だけだと思うのだ。この話でなければ、ブルーノが付き合ってくれるだろう。


「さあ、行こうか。お前の初恋の相手の話を聞かせてくれ」
「ええ」


 父の腕に自分の腕を絡めて私の部屋へと歩き始めた。



2014/05/18 22:29
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