カナリアが鳴いた
▼不安げな瞳
 いつだってウソップは不安げな瞳で俺を見つめるから、俺はどうしたらいいのかわからなくなってしまう。安心させるために触れたって、抱き締めたって、何をしたってそんな瞳で俺を映すものだから、その瞳に映る俺も情けない顔をしていて、俺が思い描いていた恋人同士ではないと思った。お互いに信頼し合って、幸せそうな顔で笑い合って、照れたりたまに喧嘩したりする、そんなものを思い描いていたのに、実際は違い、まったく幸せそうに見えないのだ。俺は触れるだけで幸せになれるというのに、ウソップは違うらしい。これではだめだ、と思いウソップが不寝番の時を狙い、話をすることにした。今日が、その日だ。
 少しだけ緊張しながら夜食を持って行くと、毛布に包まりながら星を見るウソップの姿があった。その顔で、俺を見てくれよ。


「ウソップ」
「うお!びっくりした!」
「ちゃんと見張りしてたか?」
「う…」
「星見るのもいいけど、周りも見ろよ」
「わ、わかってるよ」
「…な、」
「ん?」
「俺のこと、好きか」
「は、え?」
「どうなんだよ」


 好きと言った。手を繋いだ。抱き締めた。キスをした。セックスもした。恋人同士がするであろうことはすべてしたのに、満たされないのは、その瞳で俺を見るからなんだろう。そんな顔をしてほしいわけではない。


「俺はさ、お前のこと好きで仕方ないんだ。でもよ、お前はいつだって不安げな瞳で俺を見てるだろう?だから、わからねぇんだよお前が、俺を、」
「ちょちょちょっと待て!」
「あ?」
「なんだよそれ、サンジお前、気付いてないのか」
「なに」
「お前が不安そうな瞳で俺を見てるんじゃねぇか…俺こそ聞きたかったんだ、本当に俺でいいのかって」


 肩を抱くようにして視線を下にずらしたウソップに言われた言葉に絶句した。俺が原因でお前までそんな顔にさせていたのか。何も言わない俺を、ウソップが静かに見つめる。困ったような顔で笑うもんだから、ずきりと胸が痛んだ。


「わりぃ」
「いいんだ、だって、サンジにもそう見えてたんだろ?お互い様だな」
「ああ…な、キスしたい」
「いつも聞かないくせに」


 目を瞑る前の瞳は笑いを含んでいて、いつも見せていた不安げな瞳はどこかに消えていた。ふくよかな唇に触れるだけのキスをして、そっと抱き締めたら背中に腕が回された。やっと、通じ合った気がした。



2014/05/02 22:40
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