カナリアが鳴いた
▼気まぐれ
 気まぐれに部屋に来ては何をするでもなくソファーに寝転がりボーっとして過ごすジャブラに、何かしてくればいいのだ、と焦れる気持ちを抑えて横目でちらりと見た。こんなことが何度も何度も続くと、何か特別な感情でもあるのかと思ったが、見た感じではいつもと変化がないので、きっと、本当にただの気まぐれなのだと思う。
 幼い頃から想ってきた気持ちを否定したくせに、なぜ思わせぶりな態度をとるのか、俺にはまったくわからなかった。
 十代後半、俺は抑えられなくなった想いを打ち明ける為、ジャブラの部屋に行き、想っていることを口早に告げたら、それは勘違いだと言われてしまった。そこから俺とこいつの関係は悪化し、喧嘩ばかりするようになったのだが、最近になってジャブラは気まぐれに俺の部屋に訪れては何もせず、何も言わず過ごして、少ししたら自室へと戻っていくのを繰り返している。話しかけない俺も俺なのだが、どう声を掛けたらいいかわからない。それにきっと、この行為には意味がないのだ。
 ソファーに寝転がり天井を仰いでいたジャブラが起き上がり、俺の方を見た。ぬばたまの瞳が俺を映した。起き上がって俺が座る一人掛けのソファーに近付き、背もたれに両手をついて、俺と見つめ合う形になった。


「欲しいもんは力ずくで手に入れるもんだと思ってたよ」
「…俺は海賊じゃねぇんだ」
「何もしねぇ、求めねぇってこたぁ、好きだったわけじゃねぇんだろ」
「また否定するのか」
「チャンスあっただろ。それなのに生かさなかったお前が悪い」
「もうチャンスはくれねぇのか」
「いいぜ、やるよ」


 ジャブラが瞼を閉じたので、俺は持っていたグラスをサイドテーブルに置いてジャブラの顎を掴み、唇を舐めた。フッと笑ったジャブラの腰を掴んで自分の上に座らせる。
 気まぐれに来ていたのではなく、しっかりとした目的があって来ていたとは意外だった。同じように想っているわけではないのだろうが求められるのは悪くない。首に回された手に、挑発するような唇、舌を絡めてやると満足そうな顔をして笑った。



2014/05/16 20:06
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -