首に刃物を突き付けながらキスをする。
自分がいかれているのは分かっていたが、こいつだって十分いかれているのだ。
こうやってするキスは、普段より甘くて噎せ返りそうになる。
息をするために開けられた隙間に無理やり舌を捩じ込むと、噎せ返るような甘さが増して吐き気さえしてくる。
こいつの好物は俺の苦手なものだ。
こいつは甘いものが好きだが、俺は好きではない。
俺は辛いものが好きだが、こいつは辛いものが好きではない。
相反する存在、交わることはない、常に反対を向いていると思っていたのに、どうしてか急激に欲しくなった。
最初に手を出したのは俺がまだこいつより背の低い頃だった。
あの時は、こんな風に刃物を突き付けたりせずに、ただ欲望を満たしていたというのにそれがこんなに歪んでしまったのは、こいつが任務で男に抱かれてからだ。
醜い嫉妬心に駆られて無理やり抱いたらいつもと反応が違ったので、こいつはこういうのが好きなんだ、と確信して、その日からずっと、こんなことを繰り返している。
甘く感じるキスも、蕩けてしまいそうな行為も、すべていかれている。


「お、い」
「…なんだ」
「なに、考えてんだ、集中しろよ」


ニヤリと笑って誘う姿に下半身が疼いた。
目尻に浮かんだ生理的な涙を舌で拭ったら、恍惚とした表情を浮かべた。
スーツを掴む手を震わせて、俺の顔を見てから笑い、ぽろぽろと涙を流した。


「俺たち、ずいぶん、いかれちまったなぁ」


そんなの、生まれてからずっと、そうだろうよ。と言い、俺は首に突き付けていた刃物を静かに奥へと引いた。
そうしてからしたキスは、今までよりずっと甘くて、これだけで死んでしまうような気がした。



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2014/04/25 10:51

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