「貴方は私のすべてです」


そんなことを言いながら跪いたコワルスキーを思い出した。なんて馬鹿げているのだ、と罵倒してやればよかったのだ。それをやらなかったのはその言葉が嘘でも嬉しかったからだ。なんて単純な性格なのだろう。隊長の私がそんな単純で隊員を守ることができるのだろうか。この男は私がすべてだと言っておきながら科学にお熱だ。まるでここに私という個体が存在しないかのように。私はコワルスキーの妄想か何かか?それともコワルスキーが私の妄想かもしれない。こんな奴は最初からいなかったかもしれない。もう何がなんだかわからない。私はどうしてコワルスキーのことばかりを考えているのだ?


「隊長、どうかしましたか?顔色がとても悪いです」
「ぅるさいっ!全てお前のせいだ!」
「…と、言いますと?」
「私と2人きりだと言うのにお前は科学科学と、お前のすべてはわたしだったんじゃないのか!」


鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしているコワルスキーに更に腹が立つ。


「要するに、隊長は私に構ってほしかったわけですね?」


至極冷静に言葉を発したコワルスキーにまた腹を立てるが、発せられた言葉を脳が理解すると顔に体中の熱が集まったような感覚に陥った。いや、これは、どうしたものか、顔が熱い、コワルスキーを見ることができない、恥ずかしささえ姿を現した。


「隊長、顔の赤さが尋常ではありません」


冷静を装ってはいるが、私にはわかるぞ!お前の目尻が赤く染まっていることが!お前だって本当は構ってほしかったのだろう!


「私を見くびるな!お前の隊長だぞ!」
「存じ上げております」
「ポーカーフェイスを気取ったって無駄だ!顔が赤いぞ!」
「隊長に言われたくありません」


お互いに下を向いて表情なんて全く見えない。見る必要が無いくらいに熱が伝わってくる。部屋の温度も上がったかもしれない。


「隊長、私は隊長のことが−−」



茹で蛸とは言ってくれたな!



2013/04/28 05:26





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