付き合い始めるときに、やはり職場恋愛はバレると面倒という事なので、周りには秘密で付き合おうという事になった。ただ、付き合う前から俺がういの事を好きだというのは、数人にバレているようだが、態度さえ変えなければ付き合い始めたことはバレないだろうとこの時はそう思っていた。
 だが、付き合い始めて数日。明らかにういの態度が挙動不審なのが見てて明らか。特に俺がいる前で男と話しているときとかだ。いつもなら、距離感も考えず距離は近いわ、笑顔を振りまくわと愛想の良いタイプなのに、どこか返事は素っ気なさそうに聞こえるし、すぐに会話を切ってどこかに行こうとしているように見える。そんな態度が続けば、どこからかこんな会話が耳に届いて来てしまう。

「最近、ういちゃんよそよそしいというか何というか」
「だよな。ついに男でも出来たんじゃないか?」

 なんとなく、こちらを見られているような気もしなくはないが気にしないふりをしてPCに視線を戻す。これは、もしかしたらバレるのも時間の問題なのかもしれない。今度ういに話してみよう。まだヒソヒソと話しを続ける同僚を横目に仕事へと意識を戻した。


「だって、赤井さんの目が怖くて……」

 後日、ういに態度がおかしいと話せば、その原因は俺が睨んでいるから嫌な思いさせてるのが嫌で、そういう態度をとってしまうという事だった。原因は、俺?

「周りによく聞かれるようになりましたよ。赤井さんと付き合い始めたのか? って」

 思わず、自分へ溜息をついてしまった。無自覚だったのは俺だったようだ。そうだよな、周りも俺よりういに聞いた方が突っ込みやすいよな。だから、最近チラチラと見られる事が増えたのか。
 自分の鈍感さに嫌気がさして、項垂れている「でも意外でした」とういの声が耳に飛び込んで来た。「何がだ?」と顔を上げるとういが楽しそうに笑いながら口を開く。

「赤井さんっていつも冷静なのに、こういう事は態度に出るんだなぁって」
「幻滅したか?」
「いえ」

 嬉しそうに俺のほうに身を乗り出してきたういは、言葉を続ける。

「赤井さんのそういう一面を見られて私は嬉しいです」
「そうか。なら、良かったが」
「ほんとびっくりですよ、付き合う前は鬼で悪魔の怖い上司だったのに」
「……そういう風に思ってたのか」

 ういは思わず言ってしまったと気まずそうに目線を逸らしていく。そんなういの様子を見ながら、きっとこれから俺もういの知らない一面を知っていって、戸惑ったり、嬉しかったりいろんな感情をういに抱いていくのだろうとか考える。
 ういは小さく弱々しい声で「すみません」と謝るが「いや、いい」と微笑めば、ういも優しく笑い返してくれた。


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