最近、忙しすぎる。最近でもないか。ここ半年ほど組織の潜入捜査に追われていて、休みらしい休みを取れていない気がする。今日は合間を見つけて事務所に寄れと言われていたが結局寄れたのは日付も変わった深夜二時。書類を取りに来いと言われただけなので、すぐに用は終わる。明日も早いので、受け取るものだけ受け取ってしまい、早く帰って少しでも寝ようと事務所の駐車場へと車を停めた。
 事務所の前まで行けば、この時間に明かりが。別にそれは珍しくもなく誰かが残っているのはよくある事。あまり気にせず、扉を開けると椅子に座り携帯をいじっているういがそこにいた。こちらに気づいたういは顔を上げて「お疲れ様です、赤井さん」と頭を下げた。確か今日ういは現場だったはず。なぜ、ここに。

「今日現場じゃなかったか?」
「現場でしたよ。けど、その」

 いきなりどもり始めたういを不思議に思いながら、自分のデスクへ向かい、書類の入った茶封筒を確認する。再び、ういに視線を戻せば何かを決意したように俺を見ていた。

「その、現場だったんですけど。ちょっとデスクワーク残ってたなと思って。それで、片付けてしまおうと事務所に来たら赤井さんが今日事務所に寄るって聞いて。だから、……その会いたくて、待ってました」

 そう言ったういの顔は耳まで真っ赤で。それがとても可愛らしくて、嬉しくて。思わずういに近づいて抱きしめてしまった。

「ちょっと赤井さん! ここ職場ですよ!」
「別にこんな時間誰も来ないだろ」
「来るかもしれないですよ」

 口ではそう言いながらも俺の背中には腕が回ってきている。それに応えるようにより一層強く抱きしめると「会いたかったんです」と切ない声が聞こえてきた。

「俺も会いたかった」
「今、仕事もバラバラですし、寂しくて」

 顔を見ればういは少し泣いていて。

「……今日、俺の家に泊まるか? 明日も早いから構ってはやれないが」
「私も朝早いんで同じです。仕事が憎いです」

 少しでも恋人と一緒に過ごしたいと願うのは悪いことではないだろう。どれだけ犯罪が横行して忙しいと言っても俺たちだってただの人間であることに変わりはないのだ。ういは俺から離れ手荷物をまとめる。そして、「早く帰りましょう」と俺は腕を引っ張っられて、事務所を後にした。


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