「上杉、最近どうだ?」
「どうって。まぁ、普通かな」
屋上でタバコを吸う養護教諭の高杉といちご牛乳を飲んでいる現国担当でういの担任の坂田。二人は昔馴染みで今でも同じ学校で働いている。ういを預かる時にどうせバレるだろうと先に高杉は坂田に報告をしておいたのだ。
「普通か……」
「家ではどーなの」
ストローから口を離した坂田は高杉を見た。
「ほとんど無視、されてる」
「無視」と坂田が軽く笑えば、鋭い視線が飛んでくるのを感じて咳払いをして誤魔化した。
「まぁ、あれくらいの歳はなぁ」
「実家にいるよりはいいらしいが。……うい、いつまで居るんだろうな……」
呟くように聞こえた名前呼びに次は悟られないように静かに坂田は笑う。
「さぁな。何年教師やっててもこの年代の女の子は何考えてるかさっぱりわかんねぇからなぁ」
「そうだな」と高杉が腕時計に目をやれば五限目が始まる二十分前。携帯灰皿にタバコを捨て、「そろそろ戻んねぇとな」と屋上を出ていく。坂田も少し残ったいちご牛乳を一気に飲みきり、高杉の後を追いかけた。