仕事をしていても脳内にチラつく赤井の姿。今日が一緒の任務でなくて良かったと心の底から思ってしまうほど、集中力が足りていない。
 忘れていた感覚が戻ってくるこの感じ。年甲斐もなくちょっとワクワクしてしまっている自分を素直に認めてあげればいいものの、どこか抵抗を感じている自分がいるのだ。
 そう簡単に恋に溺れてはいけない。今までの経験達がそう私に囁いてくる。そう、ひとつもいい経験などない。なら、適当に寂しい時に相手してくれる人がいてくれればいいと思っていたのに。
 あんな風に自分でも知らなかった一面を受け止めてくれるだけで、あんなにも心のざわつきがなくなるのは初めての感覚で。彼の洞察力に惹かれているのか、彼自身に惹かれているのかはまだわからないが赤井秀一という人が気になってしまったというのは事実で。

「うい」
「……」
「うい!」
「ごめん、ちょっとボーッとしてた」

 隣にいた部下の呼ぶ声にも気づかないなんて。そして、

「……ごめん」

 肩に伸ばされた手を反射的に避けてしまった。どこか気まずそうに手を引っ込めてくれた部下にこの人は私の変化がわからないのかと勝手に抱いてしまった期待に落胆している自分がいた。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -