君の声、俺の叫び


何度肌を重ねても何度快楽を共にしても一度も愛を囁かれたことはなかった。
情事の間彼の口からは喘ぎ声しか聞き取れない。
自分はいつだって愛を告白しているのに。

きっかけはもう忘れた。
気が付くとベッドを共にしていた。それからは昼間に会ったら戦闘を繰り広げるが、夜にフラりと会ったら黙ってホテルへ向かうという毎日を繰り返していた。

きっと相手にとっては欲望を吐き出すためだけの道具としか見られていないのだろう。
それでもいいと思う自分は余程幸せになりたくないのかもしれない。
冗談めいてしか本音を出せず、体だけでも繋がりを持てていることに喜びを感じる。我ながらなかなかの変態だ。

男同士の欲の吐き出し合いは何も生まない。不毛だと思う。性欲処理だけならそこら辺の女で十分だ。
自分のビジュアルならばいくらでも女は集まる自信がある。
しかし性別という障害を乗り越えてそれでも抱きたい程溺れてしまっているのだ。
最早手遅れである。
「さて、今日は会えるかな」
日もすっかり暮れ、夜の静寂が新宿の街を包むと、折原臨也は外に出かける。
目指すは池袋。
今日も平和島静雄を抱きに行く。
「今日こそは言ってくれないかな」
どうせ期待するだけ無駄であろうが、願わずにはいられない。
いつか自分の思いが通じるときが来ることを。
そうして臨也は新宿を後にした。

そして池袋のどこかで朝まで陳腐な愛の言葉を囁き続けるのだ。

「愛しているよ、シズちゃん」


届かないとわかっていても囁かずにはいられない。





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