正直、俺はまだ心のどこかで、この世界は夢なんじゃないかと思っていた。だけど冗談じゃない。こんな夢あってたまるか。
俺だけ、平穏に過ごして、ヴォルデモートなんて関係ないなんて言ってられるわけがない。

これから、たくさんの人が死ぬ。それを分かっていて見殺しになんて出来るわけがない。さっきの光景を見て、それを痛いほどに自覚した。


「さて、反対呪文がないなら、なぜおまえたちに見せたりするのか?それはおまえたちが知っておかなければならないからだ。最悪の事態がどういうものか、おまえたちは味わっておかなければならない。せいぜいそんなものと向き合うような目に遭わぬようにするんだな。」

マッド-アイはぐるっと教室中に視線を走らせ俺とネビルへと視線を戻し「2人とも席につけ」と、俺達を促した。


それからの授業は皆、ひたすらノートを取ることに集中していた。俺はまだどこかぼうっとしていて気付けば授業が終わっていた。


「れんれん、授業終わったぞ」
「…!あぁ」
「…大丈夫なのか?あれから、随分ぼうっとしてたみたいだが」
「大丈夫だよ。心配させて悪いな、カイン」

苦笑しながら席から立ち上がると同時に目の前に人が立ちふさがった。


「…なんですか」

それはマッド-アイだった。

「ヒナタ、わしの部屋に来ないか?ロングボトムも誘おうと思っているんだが」

相変わらず、マッド-アイは、ギョロっとした目で俺を見つめていた。
俺を誘おうとしてる?何故だ?かなり怪しいが、ここは断らない方がいいのだろうか。


「カイン…先、寮戻っててくれ」

とにかく、行ってみる。色々考えた結果その結論に達した。今はまだ、危険じゃねーだろーしな。

「わかった。」


カインは先に寮へと戻って行った。そして俺はマッド-アイの跡を追い、ネビルと合流した。