シングルアンブレラ
雨の中を並んで歩く。
俺は綱海さんの右側。綱海さんの右手には、雨水を避ける、大きな傘。
(邪魔だなぁ……)
傘が。
これがなかったら今頃きっと。
(手、繋げたかもしれないのに)
そう思ったものの、なかったらなかったでどうせ繋げやしないんだ。
そんな勇気があったら傘の1本や2本くらいとっくに……
「どうした??」
ぐるぐるとした思考を遮断された。
綱海さんがこちらを覗き込んでいる。
「あっ、いえ、なんでもないです」
「ん、そうか?」
咄嗟に誤魔化したから、俺が何を考えていたか、綱海さんにはわからなかったはずだった。
でも、
「あぁ!そーだよなぁ!!」
悪ぃ悪ぃ気づかなくて。
そう言って綱海さんは傘を左手に持ちかえて器用に畳むと、
空いた右手で俺の肩を抱き寄せた。
肩を寄せて2人でひとつの傘のなか。
手を繋ぐより恥ずかしかったけど、同時にとっても嬉しかった。
多分それも綱海さんには伝わってしまってる、と思う。
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次の段階になかなか進めない立向居くんと、サクッと段階をすっ飛ばす綱海さん。
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