トラブルメイカーはやっぱりお前!! | ナノ

【リクエスト】 鬼不中心のギャグで甘いの

※佐久間視点で+源佐久

ラブルメイカーはやっぱりお前!!





目を開けると、何故か俺の身体の上に不動が跨がっていた。

「きどーくーん」
「…………」

そしてやったら機嫌のよさそうな声で鬼道の名前を口にした。
残念だったな不動、俺の名前は佐久間、佐久間次郎だ。鬼道じゃない。
というかなんで不動がここに?たしかに、昨日は俺と源田と不動とで鬼道の家に押しかけて、そのまま泊めてもらいはしたが、こいつは部屋が違ったはずだ(宿泊する俺たちひとりひとりに部屋を用意してくれるなんて流石鬼道だ、真似できない)
寝起きの頭でそこまで考えた瞬間、急に、唇、に何か、触れ

「ぎぃゃああああああああああ!!!!!!???」

「佐久間ぁ!!!!???」
「しまった!ここに居たのか!!!」

バタァン!ととてつもない音を響かせて、俺の叫び声を聞いた鬼道と源田が駆けつけてきた。
源田は口をパクパクさせている俺の背中を擦り、鬼道は未だにちうちうと俺の頬に吸い付いていた不動を引き剥がす。

「大丈夫か佐久間!?」
「げ、げ、んだ……ゆ、ゆめ、これはゆめなんだ、そうだろ……」
「話すと長くなるんだが、とにかく今は不動に近づくな!」
「奴は今……」

「「キス魔なんだ!!」」
「知るかぁぁぁああああ!!!!」

俺は全身全霊で叫んでいた。
つまりさっきのは夢じゃなくてやっぱり現実!?俺は不動とキスしてしまったのか!?冗談じゃない源田とだってまだ1回しかしてないのに!!(でも1回やってて良かった!!)

そんな俺の心情を知ってか知らずか、源田は俺を慰めようとおれの両肩に手をかける。

「大丈夫だ佐久間!さっき俺もやられた!!」
「……は?」
「俺も不動にキスされたんだ!だから一緒だ、大丈夫だ!!」
「それは何も大丈夫じゃないだろおおぉぉぉ!!!??」
「落ち着け佐久間!!」

源田の胸ぐらを掴み怒鳴った俺は鬼道に諫められてしまった。
俺から離された不動は、今度は鬼道の顔中にキスをお見舞いしている。鬼道、お前は落ち着き過ぎだ。

「ていうか何なんだこいつ本当に不動なのか!?」

少しだけ語尾を抑えて俺は訊ねた。
鬼道にベッタリとくっついている不動はいつもの1000倍くらいは穏やかな表情でニコニコしている気がする。こう言ってはなんだが、少し、気味が、悪い。

「わからん。起きたらこうなっていたんだ」
「寝てる間に何があったんだ一体……」
「何か変なものでも食べたんじゃないのか??」
「いや、だったら俺たちもこうなっていなければおかしい。同じものを食べたはずだ」

ちなみにこの間もずっと、不動は鬼道の頬に吸い付いている。鬼道、やっぱりお前は落ち着き過ぎだ。

「じゃあ、まさか、素……」
「「それはない」」
「あ、そういえば、さっき不動の部屋に入った時に、ワインの瓶を見た気がする」
「「ワイン!?」」

源田の発言に俺と鬼道の返答が2回もシンクロした。

「じゃあなんだこいつは酔っ払ってこんなことになってるのか!?」
「い、言われてみれば酒臭い気がするようなしないような……」
「きどうくん」
「しかしなんだって不動はワインなんか飲んだんだ。しかも鬼道の家のものを、勝手に」
「きどーくん、」
「たしかに、こいつは理由もなくそんなことをするような奴では……」
「きどーくん!!」
「ん?」
「これ、じゃま」
「え?」
「じゃま」

言いながら不動は鬼道のゴーグルを奪って放り投げた。
床に落下する直前になんとか源田がキャッチするも、無理な体勢がたたりそのまま部屋の隅までゴロゴロと転がっていく。さすがKOG、ナイスセーブ。今のお前の勇姿一生忘れない。

「不動!貴様いい加減に……!!!」

さすがに頭にきたのか鬼道は遂に怒鳴ったが、鬼道が言い終わらないうちに、とうとう不動は鬼道の口を塞いでしまった。
あー……と源田がため息をついている。
俺の頭は真っ白を通り越して、もはや無我の境地だ。

「ン、はぁ……」
「……不動」
「きど、くん……大好き」
「……っ!」
「ふぁっ……ん……」

そしてあろうことか、鬼道もそのキスに応えてしまった。
未だに少しだけ動転している俺たちの眼前で、それはそれはディープなキスが繰り広げられた。2人が口を動かすたびに聞こえてくる水音と悩ましげな吐息のおかげで、まるで普段はベッドの下に隠されているいけないビデオを見ている気分だった。そっちなら大歓迎だがこっちは生々しくてむしろ泣きたい。
そしてさりげなく源田が手を握ってきたが気づかないフリをした。

「ふ、不動……」
「きどう」

目をとろんとさせながら、大好き!と、さも幸せそうに鬼道に抱きつく、そんな不動を俺は初めて見た。
鬼道は顔を真っ赤にしていたが、やがて、

「不動、俺もお前を愛している」

優しそうに笑った。
今度は俺たちが真っ赤になる番だった。

「あいしてる……?」
「あぁ」
「ほんと?」
「本当だ」

そのまま鬼道は、不動の額にキスを落とす。
それを受けて不動は目をキラキラと輝かせた。

「うれしい!きどう大好き!愛してる!!」

きどうすきー!と、不動はまた鬼道に抱きついた。
疲労した頭で、なんかそんなアニメ映画あったな……とぼんやり考えていると、鬼道が不動を抱きかかえたまま、申し訳なさそうに俺たちに向き直った。

「すまない、佐久間、源田……その」
「あ、あぁ!大丈夫だ!!そういうことだって、あるだろう、うん!なぁ佐久間!?」

(ないだろ……)

しかし口には出さず、かわりに「うん、まあ……」と曖昧な返事をしておいた。

「いや、そうじゃないんだ源田。佐久間も」
「え?」
「……本当に、すまないんだが……不動と2人にしてもらえないだろうか……」

鬼道の顔はさっきよりも真っ赤だった。
源田は口をポカンと開けた間抜け面で突っ立っていて、不動は鬼道の首筋に顔をくっつけてそれはそれは幸せそうだった。

俺は、なんかもう、ほんと、疲れた。




***


「あ、そうだ。思い出した!」
「ん?」

鬼道の家を後にして、源田と2人河川敷を歩いていた。源田が足を止めたので、そのまま俺も歩みを止める。

「例のワイン、あれ、昨日、鬼道が俺たちに教えたやつだ」
「……鬼道、何か言ってたっけ?」
「ほら、財閥のパーティーの時にどこかの社長令嬢から貰ったって言ってなかったか??」
「あぁ!そうだそうだ!!『成人したら一緒に飲みましょう』って言われたとかなんとか……」
「…………」

そこまで言って、俺と源田は顔を見合わせた。

「佐久間……俺、今なら、不動があんな暴挙に出た理由がわかる気がする」
「……それが本当なら、やることが可愛い過ぎるけどな」

不動のくせに、と言ってはみたが、俺は口許から笑みが零れていくのを止められない。
つられて源田も笑っている。

「不動はどうするだろう?」
「何が?」
「酔いが冷めたら、忘れてしまうんだろうか??」
「覚えてるだろ」

そして死ぬほど恥ずかしい思いをすればいい。
正気に戻って、多分その時も傍に居るだろう鬼道と一緒に赤面すればいい。

源田の手をとって駆け出した。
男子中学生が手を繋ぎながら爆笑して走っていく様はさぞ滑稽だっただろう。
でも、その時の俺たちには、自然と湧いてくるその感情を止められなかった。

俺も源田も、あの2人が幸せならそれでいいと思った。




余談だが、次の日登校してきた不動は、想像していた通り、俺たちと口をきくどころか顔を見すらしなかった。
そんな不動を見て、俺たちはまた笑った。






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以前アンケートを設置してた際にこっそり募集してたリクエストにお応えしました。
内容は「鬼不中心のギャグで甘いの」だったのですが……
……甘いってなんだっけ??
と自問自答しながら書いてたらお待たせしまくった上にリクエストの斜め上をいくブツになってしまいました。最後のほうギャグじゃないし!
リクしてくださった方、ありがとうございました。こんな作品ですが、楽しんでいただけましたら幸いです。