頬にキスして
不意に頬をつきだしてこられたので驚いて仰け反ったら、途端に不動は心底つまらないといった表情を浮かべた。
「……ん!」
「……」
もう一度つきだしてくる。さっきより些か不機嫌だ。
どうしていいのかわからず、とりあえず、つき出された頬を指で撫でてやると、不動はかなり仰天したようで、
「なにすんだよ!!!」
と叫んで、俺から距離をとった。
「撫でてほしいんじゃないのか?」
「……ちげぇよ」
「――……じゃあなんだ、殴ってほしいのか??」
「違う!!」
「痛っ!」
なんでそうなるんだよ!!と俺の頭を叩いて、不動は本格的に不機嫌になってしまった。
そんなこと言われたって俺は超能力者じゃないのだから、何をしてほしいかなんて口にしてもらわなければわからない。……そうでなくとも、わかるようになりたい。
しばらく続いた沈黙に俺がほとほと困り果てていると、不機嫌だと思っていた不動が俺の肩に額をくっつけて、小さな声で話し始めた。
「鬼道クンはさ……」
「……なんだ?」
「俺のこと、好き、なんだよな……?」
「!!?」
どうして不動がいきなりそんなことを言い出したのか、俺は見当がつかなかったし、かなり驚いたのだが、不動があまりにもか細い声を出すのと俺のマントを無意識に握ってくるのとで俺はどうにも焦ってしまって
「不動!!!」
「わっ!な、なんだよいきなりデカイ声出して……」
「俺は、いつだってお前を愛している!!」
「あっ……!!??」
「だから、そんな……不安そうな声を出さないでくれ……」
顔を上げた不動を見つめながら、
その唇にキスをした。
「――あれ?どうしたんですか鬼道さん、その頬っぺ」
「あー?どうした不動、その顔!」
真っ赤ですよ?
真っ赤だぜ?
「……なんでもないんだ」
「いや、でも、なんだかすごく痛そうなんですけど……お、俺!氷貰ってきます!!」
「あ、立向居、ついでに体温計もらってきて、こいつ熱あるかも」
「……熱じゃねーし」
「不動、その、本当にすまなかった」
「別に謝らなくていいってば」
「しかし……」
「だからもういいって鬼道クン……」
「綱海さん、氷と体温計貰って来ましたー!」
「鬼道も不動も、何があったかよくわかんねーけど、そんなの海の広さに比べたら」
「……黙れよ」
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途中までシリアスで行こうと思っていたのに……。
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