指輪のかわりに | ナノ

輪のかわりに





「約束はしなくていい」

鬼道がそう言ってテーブルの上に置いたのは、赤と緑の糸で編まれたミサンガだった。

「ただ、ずっと持っていてほしい。そしてこれを目にする度に、俺を思い出してほしい」

それだけで充分だ。
鬼道はそう言って、向かいに座る不動の手をとった。
不動はしばらくされるがままになって、鬼道の手によって自分の手首に付けられていくミサンガを眺めていた。

「……あ」
「どうかしたか?」
「いや、なんでこんな奇抜な色なのかと思ったら、何?帝国ユニ??」
「ん?あぁ……確かに帝国のカラーだな。だが別に俺はそれを意図したわけじゃない」
「へぇ!?じゃあ何?まさか真帝国??」

勘弁してくれよ、と不動は努めてカラカラと笑った。
なんだかんだで鬼道は、あの男のことを忘れないのだと思うと、不動は少し胸が痛んだ。

「いいや、それも違う」

しかし鬼道は首を左右にふった。

これは、俺とお前だ。


ゴーグルを外した鬼道の赤い瞳が、真っ直ぐに不動を見つめている。
不動は、その緑色の瞳から今にも溢れそうなものを必死で我慢して、

「……こんなもんなくても、忘れねぇよ」

手首のミサンガを弄びながら、笑って言った。