※夜のブランコの不動side
二人のアカボシ
夜中の公園。鎖の錆びてしまったブランコに腰掛けて、俺はあいつを待っている。
あいつが俺の素っ気ないメールに返信することはほとんどなく(俺だって別に望んでるわけじゃない)来るか来ないかは誰にもわからない。けれど、俺はずっと待っている。
「不動」
静まりかえった公園に響く中低音。覚えていたものより些か低くはなっていたけれど、忘れたことなんて一度もなかった。
「遅かったじゃん」
背を駆け抜ける痺れと少しの胸の苦しみ。
ただこの瞬間に感じる幸せのためだけに、俺はずっと鬼道を待っているのだ。
***
俺が鬼道の元を一方的に去ってから2年が経とうとしている頃だった。
その場所で鬼道を見かけたのは全くの偶然だったが、俺の心は信じられないほどに乱れてしまった。
鬼道の左手、しかも薬指に光る指輪。
俺はただの一度だって鬼道のことを忘れたことなんてなかったのに、あいつは俺のことなんてこれっぽっちも考えちゃいなかったのか。
そう考え終わるよりも先に、俺は結局最後まで消すことが出来なかったアドレスに、メールを宛てていたのだ。
我ながら随分浅はかなことをしてしまったと思っている。
鬼道有人の未来を壊すのが怖くて、奴の元から消えたってのに、自分から再び壊しにかかっているなんて。
しかも、あの忌々しいシルバーが相変わらず鬼道の指で輝いていて、それは俺をとてつもなく憂鬱にさせるのだ。
「……外してきてくれねぇのな」
それでも、鬼道に俺のことを忘れないで欲しいと思う自分と、鬼道の「普通」を願う自分は、確かに俺の中に存在していて、
だからこそ、俺は鬼道に逢うことができる。
……実に愚かしいことだ。
***
「…………」
「…………」
ブランコから移動して、公園のベンチに二人して座る。お互いに何も話しはしない。肩を寄せてじっとしているだけだった。
しかし、鬼道は自分の肩に乗る不動の頭を退かしたりはしない。
たまに不意討ちで頭を撫でてくるその手つきが余りにも優しく心地よくて、不動は何度も泣きそうになるのだった。
頭上に瞬いていた星は鳴りを潜めて、闇に紛れていた雲が姿を見せ始めた。
もうすぐ、夜が明ける。
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うまくまとまらなかったのですがとりあえずup。
適宜に加筆、修正をやっていくかもしれません。
今回の元ネタはキンモ●セイの同タイトル曲。
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