きっと違う話 | ナノ


っと違う話




やさしくしてほしい。


目の前の男の口から発せられたなど俄に信じ難い台詞ではあったが、しかし鬼道は確かに聞いた。

「……お前はむしろ痛いくらいのほうが好きなのかと思っていたんだが」
「痛いの嫌なんだよ……つか俺をなンだと思ってんだよ鬼道クン」

心外だとでも言わんばかりの表情で不動は見上げてくる。
鬼道が何も言わないでいると、少しため息をついてから、

「ま、下手じゃなきゃなんでもいいぜ」

と、何故か半ば諦めたように言った。

「……下手じゃあない」
「え、経験あんの?」
「……」
「無ぇのかよ!ったく、それじゃわかんねっつーの」
「いや、大丈夫だ」

お前への愛で乗り切る。

鬼道が真顔で言ったものだから、不動は盛大に吹き出した。
目を細めて鬼道をみやるその表情は、それでも酷く幸せそうだった。

「じゃあ見せて貰おうじゃねーの??」

鬼道クンの、愛ってやつを。

言いながら不動は目を閉じた。
鬼道はしばらくそのまま不動を見つめた後、意を決したように、自身の顔を不動のそれに近付けだのだった。



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鬼道さんが不動くんの耳掃除してあげる話です、はい。