人形アソビ(目箱) | ナノ
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 禊くんは帰ってきて何もいわなかったし、何も聞かなかった。いや何を買ったかは聞かれレシート見せて、とは言われたけれど。


「ねぇ、禊くん」
『なあに、遊心ちゃん』


 後ろを向いている禊くんに声をかけたら振り返られた。振り返らなくても…結構下らない内容なんだけど。


「お金、どうしてるの?」


 買ってきて思ったのだ。禊くんがよく使っている肌触りのいいティッシュはちゃんとした上物のティッシュだった。安売りのティッシュが200円だったとしたら600円もするティッシュ。あれを買っているだけでも私の中ですぐお金がなくなる気がするんだ。


『ああ、バイトしてるんだよ』
「え」
『だからアルバイト』


 禊くんがアルバイトしてるなんて知らなかった。禊くんに世話になりっぱなしの自分に少し嫌気がさしたが、私は何を思っているんだと頭を振る。禊くんと一緒にいるとなんか変だ。私のものにしたくなるくらい。


「でも、禊くんどんなアルバイトしてるの?」


 禊くんなんていう巨大な過負荷(マイナス)を雇ってくれるなんてただ者じゃないよ。そこのお店…。


『言ったら来るでしょ?だから、言わないよ』
「けち」


 禊くんは意地悪だ。いいもの。怒江ちゃんから聞いてやるもん。


『怒江ちゃんも知らないよ』
「なんで…」
『声に出てたからさ。絶対ダメだからね』


 いつもより強く否定され、私はいらない子なのかと落ち込む。役にたちたかったけどたてなかったのかなあ。


『あーもう。遊心ちゃんのこと大切だから落ち込まないの』


 いつの間にか近くにいた禊くんに言われ、ぎゅと抱きしめられていて、禊くんの体温があったかい…、そうじゃなくて…。


「追求しなきゃいいんだよね」
『そう。遊心ちゃんには知られたくないから。それだけ大切なんだよ』


 禊くんはずるい。私の欲しい言葉を直にくれる。


「ずるいよ、禊くんは」


 私は首を後ろにまわし、禊くんに文句をいう。禊くんはその文句に笑顔を返す。いつものように皮がある薄い笑みを、でもそれが禊くんだからいいのかと思い私は彼の体温を感じながら笑顔を浮かべた。



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