::05 「転校だなんて冗談じゃねぇよ」 そういったのは女の子か、それとも男の子か。禊くんはその回答がわかっていたかのように、感情が読み取れない薄い笑みを見せた。 『そういうと思ったよ。でもね、君たちはきっと転校することになるんだ。よく覚えておいてね』 そういって禊くんは三人を帰した。バタン、と三人が玄関からでていく音を聞いてまだ笑っている禊くんに問い掛けた。 「禊くん、これでよかったの?」 『あぁ、うん。どうせ仲良くなると思うからさ。安心院さんやめだかちゃんと戦うときには必要だからね』 …安心院さん、めだかちゃん…?誰だろう、その人は。でも禊くんがその人たちの名前を出したときに、くしゃりと顔を歪めるのだ。大切な、人なんだろうか。でも、真実を聞きたくない。聞いてもどうせはぐらかすのはわかっている。 「ねぇ、禊くん。安心院さんとめだかちゃんって何者なの?」 聞いたはいいものの、やはり禊くんは、はぐらかした。めだかちゃんの情報は少し教えてくれたけど。すごく普通以上の方、らしい。小さいときに私も会ったことあるよ、と言われたがあまり覚えていない。そのときは人吉先生を落とすのに一所懸命だったから。しかし、めだかちゃんのことは教えてくれたが、安心院さんのほうはどうだろうか。彼に問い詰めても、一口に口を開かなかった。少し、苛々として、その彼女を殺してしまおうかと考えたが、相手は異常(アブノーマル)だったら私はすぐにやられてしまうだろう。少し考えて、私は一つの結論を導いた。その安心院さんやらが今現在禊くんの学校にいる奴か確認すればいいのではないか、と。前々から多少なりとも思っていたが、学園に私の人形を入れなくてはいけない。しかし、入れよう、入れようと思っていても簡単に入れられるはずがない。ばれないように操って人格を保たなければならないし、そして、どの人形にするか決めなくてはならない。あと、家から出なくちゃいけないし。 ふ、と思い出すとティッシュがなくなっていたような気がする。ちなみに今日は平日。禊くんは学校でいつもより帰宅時間が遅くなるといっていた。私はティッシュとかを買いに行く為に禊くんに電話をした。 「禊くん、ティッシュなくなっちゃったから買ってきていい?」 『それなら、僕が買ってくるよ?』 「いや、ちょっと女の子のものを買いたいというか、なんというか…」 『え!?あれなの?』 「禊くんごめん、詳しく問い詰めないで」 絶対に今禊くんは、目を輝かせているであろう。だって健全な男の子、だものね。それは仕方ないような気がするけど。 「だからさ、行ってきていい?」 『わかった。近所のドラッグストアに売ってるはずだからさ。出来ればいつも使ってるティッシュにしてね。あ、お金は大丈夫?』 「わかった、ん、と一応あるかな」 他愛のない会話をしつつ、鍵を探し、家から出る。久しぶりの外。やっぱり外はいいよね。 「じゃあ、行きますか」 かばんを抱え直して、私は笑みを見せながら、ドラッグストアの方ではなく、学園のほうへと向かった。だって、気になるし、見つからなければいいと思うんだ。 111229 ←::→ ::top
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