人形アソビ(目箱) | ナノ
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 平日、禊くんには学校がある。私もあるといえばあるが、義務教育は既に済んでいるから問題はないだろう。今現在私は禊くんの家に居候みたいな形で住んでいる。禊くんの家には生活感のかけらもなく(ティッシュの山とかは見なかったことにする)、ご飯も見当たらなかった。それが彼らしいといえば彼らしいのだが。ちなみに私はほとんど働かないので(料理とかは人形たちが作ってくれていた)、どうしようもない。


「…お腹、すいたなあ…」


 きゅるきゅる、とお腹が鳴る。恥ずかしいとは思わない。人形たちがいたらこの音がしたら直ぐにご飯を作ってくれるから鳴ったもの勝ちだ。お金、あったっけなあ…。とりあえず所持品はいつ何時でも鞄の中に入れ、持ち歩いている。大好きな人形と、お財布、そして替えの洋服。それくらいあれば人形たちのところは転々と出来る。でも最近の人形たちは体目当てが多く少し最悪だ。禊くんは違うと思いたいけど、ティッシュを見た限りなんともいえない。私は鞄をまさぐり財布を出し、中身を確認する。


「1700円か…うーん」


 少しお金を持ってる人形から貰ったはずなのに…どうしたんだろうと思ったら、替えの服を買ったのだ、と気付いた。女の子だもの。仕方ないよ。私はお金をしまい、とりあえずコンビニへ行こうと思い、玄関へ向かうと玄関の鍵は禊くんのねじが。いいのかこれ。アパートの管理人さん…あ、私へし折ったんだ。おばあちゃんだし、お菓子くれるかなって。それやったら禊くんに怒られたけど。おばあちゃんは禊くんのお陰で私がへし折ったことをなかったことにされたんだけど。


『いーい、遊心ちゃん勝手にへし折っちゃダメだからね。僕がいるときならまだしも。だから、勝手に外出ちゃダメだよ。出たかったら電話してね?』


 おばあちゃんをへし折ってしまったときに禊くんにこう怒られた。だから私は外に出れない。いこーる、ご飯食べられない…。
 私は禊くんが置いていってくれた携帯電話を持ち、コールボタンを押した。機械音が直ぐに止み、禊くんの雰囲気が私に伝わってくる。


『どうしたの?』
「お腹空いたの。どうしたらいい?」


 禊くんはわざとらしいため息をついて、私に言い聞かせる。


『やれやれ。僕のお姫様はわがままだね。わかった。あと少し待っててご飯買ってから帰るからさ。苦手なものとかないよね?』
「ないよ!待ってるねー」


 禊くんは嘘つきだ。だからこそ、直ぐに帰ってくるのなんてわかっていた。カチャン、と鍵が開く音。ほら、帰ってきた。


111219





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