人形アソビ(目箱) | ナノ
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 物心ついたときから、私は人形の腕をよくちぎって遊んでいた。近くの子は怖がって近づいて来なかったけれど、ヒトリだけ怖がらない子がいた。その子も私と一緒で人形の腕をちぎって遊んでいて、どこがよく切れるのかと教わったものだった。
 その子がいなくなってから、私は病院へとつれていかれた。強制、とだけあって反抗は認められなかったけれど別に気にしなかった。私の人形たちが今現在どうなっているかは知らないが。
 私が住んでいた所──…孤児院みたいな所だが、多くの人形がいた。前はオンオフが付けられなかったの小さな子や周囲の人、ネコなどの生き物を人形にして遊んでいた。その中で私は女王様のような立場だった。ネコを捕まえて、女の子に持たせ腐らせたり、きゃっきゃと笑いながら恐ろしい子だったと自分自身記憶している。その中で1番好きだったのはシスターと呼んでいた人形だ。あれは私にご飯などの生活に欠かせないことをなんでもやってくれた。その他にもいたけれど、人形を縫ったり、お世話したりするのがその他だ。それがとても私にとって幸せであったし、楽しかった。


「ねえ、折目ちゃん今あなたは幸せ?」


 人吉、という名前の方が私の病院の先生だった。人吉先生はとても可愛く、人形アソビとしたかったけれど先生とだけあって無理だった。ちょっと悔しかったのを覚えている。そしてそこの病院で会った子の名前を覚えた。以前ネコを渡した子だという印象しかなかったので名前を聞かなかったのだ。


「、むかえちゃんね。おぼえた」


 ふひひ、と満足気な笑みを見せ、むかえちゃんとお話した。むかえちゃんともお話しても屈しなかったけれど、私は気にしないこととする。そのときはすっごく人吉先生がほしかったからだ。
 人吉先生がいなくなった、と聞いて私は周囲の人を巻き込んだ。担当が気持ち悪かったのだ。人吉先生がよかったのに。巻き込んで、退院させてもらい、外へ出た。
 年齢は10歳。ほとんど入院していたようなものだったので、外の世界は知らなかったけれど、私は一つだけ学ぶことができた。私がいた場所は普通ではなかった、ということである。
 


 恐らく孤児院辺りに戻り、義務教育を嫌々ながらやり、受験をし、高校へ入学。でも気付いたら学校はなくなっていた。私は中退となり、住んでいた孤児院が潰れたため、家を転々としていた。そのときに彼に捕まったのだった。私と一緒にいてくれた子。
 そう、球磨川 禊くんに。




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