人形アソビ(目箱) | ナノ
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 基本的に私と禊くんはご飯中に何かを話す、ということはあまりない。私は自ら進んで会話を持って行けるほど話し上手じゃない。むしろ下手なほう。禊くんは…多分喋るのは喋るのだろうけれど女の子と話すのが基本慣れていないのかな、と思う。最近ティッシュの山も小さくなってるし。でもゴミ袋に入ってる、ってことは知ってるからね。いや、多分見せ付けてるのかな、なら見てあげようか、なんてご飯食べながら思うことではないと思い直し、ぱくりとオムライスを口に含む。うん、おいしい。


『ねぇ、遊心ちゃん』


 でも今日はいつもとは違い、少し真面目な顔で禊くんは私の名前を呼んだ。

「…何?」

 ご飯を口に含んだまま、返答は失礼だと思い、ご飯を飲み込んだ後に私は彼に問い掛けた。


『今日、水槽学園の近くに来たよね?』


 ぞわり、と背筋が凍った。口の中に広がっていたケチャップの甘味が感じられない。…そう、私は確かに水槽学園近くに行った。禊くんのことが気になったからだ。嘘なんて禊くんにつける訳がない。だって禊くんの存在事態嘘つきみたいなものだからだ。言い方はひどいが、禊くんは平気で真顔で真実味がありそうに嘘をはく。それにはひっかかる人は大勢いるし、ひっかからなくても、大嘘つき(オールフィクション)で何かしらやってしまうだろう。禊くんはまだ私を見ている。禊くんの視線が堪えられなくて禊くんのお皿をちらりと見遣るとオムライスは卵の意味を為していなかった。所謂鯛焼きを潰して、餡をぺろりと舐めるように、真ん中辺りにある卵の膜を潰して卵の膜が切れた所からご飯を食べる。変な食べ方。


『来たんだね、無言は肯定と見なすからね。でもね、もう来ちゃダメだよ?あそこ危ないんだから』
「禊くんが生徒会長さんなのに?」


 あ、やってしまった。こんなこと聞いたら私が本当に行ったということがわかってしまう。でも多分禊くんは私の姿を見ていたんだろうなあ…ならしょうがない。禊くんは私の質問に驚きもせず、オムライスをぐしゃぐしゃにしながら、うんと言った。



120108




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