人形アソビ(目箱) | ナノ
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 抱きしめを禊くんは緩め、ご飯にしようか、と微笑んだ。私のお腹の音が漏れて、聞かれたようで、禊くんは苦笑している。


『雰囲気はよかったけど。やっぱりダメなんだなあ』
「禊くん、どうしたの」


 呟いた禊くんに私は問い詰める。禊くんははぐらかす。いつもと同じだ。少しくらい教えてくれたっていいじゃないか。


『今日はさ、料理作るから、手伝ってくれない?』


 禊くんは私の手をとり、キッチンへ向かう。禊くんが料理するのは私始めて見る。


「禊くん、料理出来るの?」
『家事全般が一応出来るよ?縫いぐるみとか縫ってたじゃない、僕』


 そういえば、と小さい頃を思い出す。禊くんは自ら縫いぐるみを破き(私は破る方法を見てた)、そしてポケットから針と糸を出して縫っていたことを思い出した。禊くん器用だったよなあ、昔から…。


「何作るの?」
『多分オムライス辺りかな。簡単だし。嫌いじゃないよね?』
「どちらかといえば好きな方だよ?」


 多分禊くんは私の好きな食べ物を知っているんだろう。私は小さい頃からシスターという人形が作るオムライスが大好きだった。病院に通うことになったときもオムライスがいいと駄々をこねたこともあった。うん、懐かしい。


「オムライス、美味しいんだよ?卵がご飯をふわあって包んでくれるの。みそぎくん、大きくなったら私につくってね?」
『…考えとくね』


 …小さい頃の口約束。禊くんはちゃんと覚えていた。あの時は人形を縫っていた禊くんに話しかけたのが始まりだった。それが今や、同居みたいになってて…信じられないよ。


『遊心ちゃん、卵混ぜてくれない?』
「はしでくるくるすればいいんだよね?」
『そうだよ。綺麗に混ぜてね』


 ご飯なんて作ったことなんかない。私はいつでも待っていた。でも今は待っていても何もないんだ。私は卵をくるくるとはしで混ぜながら、ぼおるを見ていた。銀色に輝くぼおるは私の顔をうつし、はしをうつし、卵が中に。


『遊心ちゃん。これでいいよ』


 禊くんが使っていたふらいぱんからは、ケチャップライスのにおいがする。


「……おいしそう」
『もうすぐで出来上がるからさ。向こうの部屋にいてくれる?』
「わかった」


 数分が経ち、禊くんがおさらとスプーンを持って部屋へ入ってきた。そして私のところと自分のところに出来立てのオムライスを置いて、いただきます、と手を合わせた。






120105
ちなみに私オムライス食べられません






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