宗像形に道を教えてもらいつつ、誰かしらの血で――…まあ十中八九黒神めだかの靴についた高千穂千種の血か人吉善吉についた宗像形の血だろうとは思うけれど。 とんとん、と軽く私は階段を下りると、奥のほうにあるシャッターの方から激しいもの音が聞こえた。この無駄なことがない音はおそらく阿久根高貴だろう。そして近くからは対馬右脳と対馬左脳、人吉善吉の声が響いている。 「ああ、見境。流石だね。拒絶の扉からは拒絶されなかったんだ」 「ああ、対馬右脳。お前も楽しそうではないか。ちなみに私がここにいるのは喜界島もがなを守りに来ただけだ」 「喜界島?ああ、あの子。あの子は見境、君に守られるほど弱くないさ」 「対馬左脳、それは違う。私は喜界島もがなという少女が心配で追っただけだ。それ以上も以下もない」 「「ふーん。まあいいんじゃない」」 「対馬二人、君らはどうしてここにいる。門番をすると張り切っていたのにどうして門番をやらない」 「それは――…」 「いやいい。下らない質問をしたな。気にするな。ほら対馬二人、人吉善吉が呼んでいる。早く行け」 「見境は一緒じゃないのか?」 「ああ、いっただろ。私は喜界島もがなを守りに来た、と。ばれたら喜界島もがなに怒られる」 「ふぅん。見境、人間くさくなったね。いいことだけど」 そういって対馬二人は人吉善吉のほうへ向かい、私はB3へ残る。この階に怪我人が出るはずがない。おそらくこのコンクリートを砕く音は古賀いたみという普通だった彼女が行っていることだろうし、そして一緒によくいた名瀬夭歌だと名乗っていた彼女、私の目から見たら名前が二つあったからどっちが本当か幾分わからないが、本名は黒神くじら、というほうだと思う。まあそのことに関してはどうでもいい。とりあえず、音を聞いて階下に下りるとしよう。 喜界島もがなに怒られたくないからな。 120427 久しぶりに。 prev|next |