名前を呼ばれ振り向いたら、競泳部の屋久島先輩だった。 「屋久島先輩、どうかしましたか?」 先輩は少し歯切れが悪そうな、いや苦笑いをしながら私に問いかけた。 「喜界島と仲良くなったか?」 「もがなちゃんと、ですか?先程友情の確認をしましたよ」 ああ、先輩方は心配なんだ。喜界島さんが生徒会に入って傷付いたりするとこを見たくないのか。それは本当に友情ではなく愛情。家族のように思ってなければ、そんなことをしませんよね。はて、私はもがなちゃんをどう思っているのでしょうか。友人、とまでしか思ってませんかね。これから知っていけばいい話ですか。私は利用価値としか思われてなかったですからね、家でも、どこでも。だからこそ無償で付き合ってくれるもがなちゃんは友人というか大切な人、なんでしょうか。そういうことにしておきましょう。頭がぐるぐるしますし。 「なら話は早いな、見境喜界島を見守っててくれないか?競泳部という中では俺と種子島が喜界島を守ってきた。だが、生徒会までは何も出来ない。会長に頼んでもいいんだが、ちょっと色々あってな…」 「守る、ですか。変な輩から守ればいいんですか?」 「そういうことになるか。一応お前護身術やってるだろう。そうじゃなきゃ11組で対応出来ないしな」 なぜ、わかった。少し驚いたが、その通りだ。そうでなければ審判証明書なんてもらえない。海外で審判会とかあるのはざらだからこそ私は言語も護身術さえも学んでいる。いつ狙われるかわからないからこそ、だが。 「やっていますが…、喜界島さんを守るのは少し違う気がします…」 「気のせいだろ、じゃ任せたからな、見境」 そういって屋久島先輩はプールへ向かって行く。おそらく喜界島さん達が待っているのだろう。私はその姿をほほえましく思い、私の視界から消えるまで眺めていた。 「…ったくまた真似してんじゃねーよ、めだかちゃん」 人吉くんの声が後ろから聞こえ、振り向くと生徒会長さんが…気配しなかったんですが…。 「見境同級生、生徒会に―…」 「すみませんがお断りさせていただきます。私は影から見守ろうと思うので。会長さん達は正面からもがなちゃんを守ってください」 そうか、と残念そうな表情をして会長さんは生徒会室へと戻っていた。 「断るってわかってたのに、めだかちゃんは馬鹿だよなあ」 「そうですね、人吉くん」 光では生徒会長さんに、影では私に。もがなちゃんは幸せものです。幸せになって欲しいです。 「あ―、見境名前でいいぞ、俺のこと」 「なら私も名前でいいですよ、善吉くん」 二人で笑みを浮かべながら、私はタイム測定へ、善吉くんは生徒会室へ向かっていったのだった。 111203 prev|next |