あまり女の子らしい、とはいいがたいタオルを眼鏡くんに渡した。まあ汗かきまくっているよかましか、と思い渡したけれど、いつ返ってくるか、が問題である。
「タオルー」 「どうした、笹原」 「あー、た…松本くんだー」 「名前でいいよ」 「めんどくさい」
2年になって、松本たかひろくんと同じクラスになった。彼は帽子くん、もとい唐沢くんの隣人さんであったような。
「あ!そうか」 「なんか嫌な予感がするんだけど」
松本くんは眉間にシワを寄せ、嫌そうなな顔をした。いやその前にその眠そうな顔を起こしたいのだが。ばちん、という大きな音を出して叩きたい。
「ね、松本くん。叩いていい?」 「は?」 「ごめん、なんでもない」
つい自分の欲望を吐露してしまった。申し訳ない。
「まあ笹原元から変だから気にしないよ」 「お前には変だと言われたくなかった!」 「いやサキがどこかしら変だから」 「やっちゃん…っ!ひどい!おい、サオリン失笑すんな」
これが私のいつもの教室風景。やっちゃんは最近毒舌気味だ。多分眼鏡くんに会えてないというのが1つの原因だろう。恋する乙女は違うのです、ってね
「主題ずれた。た…いや薬中…」 「名前ですらなってないけど…」 「薬中に見えるからってミカリンそれは…ぶはっ」 「サオリン笑った!アウト」 「意味わからないけど、用をはっきりしなさい」 「ごめん。やっちゃん」
謝ってもないから本当にやっちゃんは機嫌が悪い。あとで準備させて合わせないといつか私やっちゃんの毒舌で心がずたずたになりそうだよ。いや有り得ないけど。
「ま…たかひろくん、お隣りの唐沢くんと仲いい?」 「割といいほうじゃないか…、って名前呼んだよな」 「呼んだ、呼んだ。でさ、1つ頼まれてもらってもいい?」
会話をしながら眼鏡くんにメールを打つ。洗濯物(私のタオル)がかわいたら、次の日唐沢くんに渡してくれみたいな雰囲気を送った。一応洗濯の部分はデコメをつかって大きな赤字にしてみたけど。 あ、あと唐沢さんにもメール送らなきゃか。
「多分一週間後くらいに唐沢さんからタオル届けられると思うけど、そのタオル私のだから届けて」 「…おー、わかった」
簡単に理解してくれる松本くん。楽だ。
「授業始めるぞー」
いつの間にか先生がいたので、私は大急ぎで自分の机の中から教科書とノートを取り出したのだった。
120420
|