上手くいかない事ばかりだ、そう思って溜め息を吐いたのは何度目だろう。
頑張りたいのに、強くなりたいのに、体はなかなか上手く動いてくれない。

強くなると誓ったんだ。
泣かないって心に決めたんだ。
なのに、僕はちっとも強くは成れないし、いまにも泣きそうだ。分かっているのに、すぐに強く成れるのなら誰も苦労なんかしない、って。それでも悔しかった。
自分と同い年の子が、同じ背丈の子が、遥かに強くて、気高くて、カッコいい事が。
追いつきたくて、でも追いつけなくて、自分に託された思いがあんまりに重くて、期待に応えられない自分に心底幻滅した。
幻滅した所で何かが変わるわけではないけれど、気持ちばかりがどんどん墜ちていく。
あの大きな背中に並びたいだけなのに、どうして僕にはそれすら出来ないのだろうか。


泣きそうになって、そんな卑怯な自分が嫌で、ヘアバンドを目許まで下ろす。
暗闇は嫌いだけど、今は少しだけ安心した。
誰にも見られない静かな世界で、今だけは泣きわめきたい。明日からは頑張るから、って言い訳して、何かに縋りたい。
でも、そんな事だから僕は強く成れないんだ。
縋っちゃ駄目だ。ちゃんと、自分の足で立たなくちゃ。


前へに、進むって決めたから。
迷ってばかりで、すぐに挫けそうになって、情けなくて、ダメダメな僕だけど、

強くなると誓ったのは嘘でも勢いでもない僕の意志だから、

僕は、もっと頑張るです。

『強くなれ』

その言葉に恥じぬように。


ヘアバンドを押し上げて、前を向いて、
僕はコートへと走った。



夢に向かって




END

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