私を見る貴方の目はいつも何処か違う場所を見ていて、本当はヒトカケラも私を見ていない。
でもそれが一体どうした?たったそれだけの事じゃないか。そう言って笑うには少し限界が近かった。
とてつもない悲しみが私を圧し殺そうとする。そしてその一端を担っているのは貴方。
でもそんな事を知らない貴方は笑う。
それはそれは無邪気に。そんな貴方を何度も何度も殺してやろうと思った。憎らしくて、憎らしくて、何度だって思ったわ。
それでも私にはそれを実行する事が出来なかったの。どうしようもなく空しいだけの関係だと知っていても私はやっぱり貴方が好きで、貴方を失う事なんて私には出来なかったから。
重ねられるのは嫌。
私を見てくれないのは嫌。
愛して欲しい。

だけど何より、側に居て欲しいから。

それを言ったら友達は私を健気だね、と言って眉を寄せた。
彼女の表情は言外に語る。“良い子ぶるなよ”と。
あぁ、そうだ。
私は良い子ぶっているだけ。
彼に嫌われたくが無いゆえにすべてを受け入れているフリをする。
分かってはいるのだ。
そんな事をしていても彼の気持ちは私に傾かないし、決して私を見たりしないって。
だって貴方をつなぎ止めているのは女であると言う事実だけで、私がもしも男だったら見向きもしなかったでしょう?


貴方は私が好きなんじゃない。
“女の子”が好きなだけ。
それくらい私だって分かっているのよ?
分かっているから余計に悔しい。
だって彼の心を射止めたのは女じゃなくって男なんだもの。
私は女なのに、なのに彼を手に入れられない。
だけどあの人は男の癖に彼を手に入れた。

それが悔しくて、切なくて、何より恨めしかった。
でも同時に優越感もあった。

だってあの人は男だから、彼は告白なんて出来ないし、一生隣りを手に入れる事なんて無い。
でも私は隣りを歩けるし手だって繋げる!
私は、認められているんだ。

好きでいたって咎められない。

でも、もしも貴方がそれすら乗り越えると言うのなら、やっぱり私は捨てられるのかしら。
いえ。捨てられるに決まっているわ。
だって気持ちのない関係が続くわけないものね。
覚悟なんて無いけれど、諦めだったら付いているわ。
最初から希望なんてなかったもの。
期待なんてしてない。
別に貴方が離れて行っても平気。
だから、行けば良いのよ。貴方なんてフられてしまえば良い。

そしたら、慰めるくらいしてあげるわ。









愛への代償
(それは紛れもない恋心)




END
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -