俺はバカだけど物知らずじゃない。
だから知っているんだよ、君の俺を見る瞳が何故そんなにも冷たいのかの理由を。

「気にする事ないのに。」
「あ?んだよ。」

俺の言葉に刺々しく答えた彼の瞳は相変わらず冷たい色を宿していてキレイだ。
特にこの喫茶店の淡いオレンジを反射して輝いてる時が俺は一番好き。
だから出来ればそうやって目を細くしないで欲しいけど、それは睨んでいる以上無理な相談だろうから俺は大人しく口を閉じたまま微笑んで返した。それを見た彼は更に眉間の皺を増やして眼光を鋭くさせる。
どうやら逆効果の様だ。残念。

「怒らないでよ、俺まだ何もしてないのに。」
「まだ?」
「あ、いやいやこれから何かする訳でもないんだけどね。」

勘ぐる様にまだ細くなるのかよ、って限界値まで(多分限界値だと思いたい)細くされた瞳に向かって焦りながら言い訳をする。
せめてこの限られた時間くらいその瞳を観賞させてよ。

「それにさ、そんな顔してたら折角のデートが台無しでしょ?」

でも俺もまだまだ負けないよ。どんなに睨んだって怯まないんだから、と意気込み微笑んでみると彼はなんとも言えない表情をした。
多分。
いや絶対。
デートって言葉が引っ掛かったのだろう。
でもここで言い訳が許されるなら聞いてくれ、俺は別に勘違いとかフザけてとかで言ったんじゃないのですよ。
事実いま俺達はデート成る物をしていて、しかも曲がりなりにも恋人だったりもする。
信じられないよね。うん、分かる。
だって更に事実を言ってしまえばお互いが想い合って恋人をやっているわけじゃないのだから。

何故かって?
これは言わばゲームなのだよ。

始まりはそう、約一ヵ月前まで逆上る。原因は氷帝テニス部レギュラー人の些細な遊びだ。
その遊びで珍しくも最下位を記録してしまった彼は悲しくも罰ゲームを言い渡され、しかもその罰ゲームが一時期流行った告白ゲームであり、対象が俺だったってのがこの関係の種明かし。
しかも彼は性格的に負けたのに罰ゲームをやらないなんて出来なくて、バカ正直に俺へと告白した。そんでもって俺までバカ正直にOKを出したのだ。
だってそんなの知らなかったし、俺は彼に憬れていた。告白されたショックで憧れが恋に変わってしまってもそれは俺の所為じゃないと俺は言い切るよ。
不可抗力だ。

とにかくその所為で彼は俺に種明かしをするタイミングを失い、更にヘンテコリンな恋人を手に入れてしまったわけだ。
憐れだよね。
自分の所為だけど同情するよ。

「お前、外でそれ言うのやめろ。」

変な顔のまま、彼はそう言った。
俺は取りあえずメンゴと謝ってからメロンクリームソーダを飲む。
しゅわしゅわしてて、甘い。

「ね、跡部クン。」

彼の瞳が俺を見る。

「俺の事すき?」

眉間にはやっぱり皺がある。


彼は、バカなのだ。
嘘だとか、罰ゲームだったんだとか、絶対に言えなくて、しかも別れを切り出す事も出来ない。
まるで流れに身を任せる様に、嫌だなんて一言も言わないで俺に口付ける。
気持ち悪いだろうにそれすら言わないで我慢して、そろそろ皺は跡を残しそう。
でも、でもね。
俺も結局は何だかんだバカだから別れなんて切り出せない。どんなにそれが彼を苦しめるのか分かっていても、ただただ優しさに甘える。
だってそんな事も知らない彼は、純粋に騙している事に罪悪感を感じて俺をフルなんて出来ないんだもん。

だから俺はそれを精一杯利用して、ずっと彼を縛り付けるんだ。




「だから…外でそれ言うの、やめろ。」











これが罰ゲーム
(本当に、罰ゲームでしかない)




END
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