誰かが呼ぶ声がした。
すごくすごく懐かしい声だ。
ずっと焦がれていた、聞きたかった声。
そう認識して、段々と意識が覚醒に向かっていく。
「跡部くん」
今度はハッキリとその声が聞こえた。
目をゆっくりと開けば目の前に現れるのは懐かしい橙色。
「お疲れ様」
俺を見つめ、微笑んだのは誰より何より愛しいその人。
やっと、
やっと会えた。
「千石」
「うん。」
俺は勢いのままその身体を抱きしめ、痛いと言いながらも笑う千石の肩に頭を埋めた。
あの日抱きしめる事ができなかった分まで、力いっぱい温かな身体を抱く。
「ずっと逢いたかった。」
「俺もだよ。」
背中に回された腕も、耳元で囁く声も、本当に久しぶりで
やっと取り戻した存在に自然と涙が溢れて止まらなかった。だけどもう止める必死もない。
千石以外いないのだから意地なんて張らなくてもいいんだ。
「愛してる」
「うん」
「もう離さないから」
「お願いされても離れてあげないよ」
「絶対にだ」
「もちろん」
今度こそ、
幸せになろう
俺がそう言って笑うと、千石も頷いて笑った。
これからはずっと一緒に
『ずっと一緒に居られますように』
『そんなもんに願わなくたって俺様が叶えてやるよ。』
『もー、跡部クンにはロマンがないなぁ。ほら、君もミサンガ付けて!お願いしなさい!』
(……ずっと、千石の隣りに)
end