人間は復讐に燃えると何を仕出かすかわからない。何故なら自分の身を省みず特攻するケースが多く、がむしゃらになった人間ほど考えが読めなくて、家事場の馬鹿力よろしくな威力を発揮するものはないからだ。
しかしこのご時世そんな復讐鬼が生まれるほど荒んだ事はなく、むしろ日本は平和ボケしているくらいなのだが何故か俺の目の前には恐ろしい復讐鬼が一人いた。平和な日本に生まれた復讐鬼こと千石清純はメラメラと闘志を燃やしてコートにいる白石を見つめている。いや、睨んでいる。
どうやらこの間の事件を相当根に持っているらしい。

事件と言っても別に対したことはなく、単純に千石のさりげない拒否を尽く白石が天然で粉砕してしまっただけのことなのだ。まあ話術というか、言葉の使い方に人一倍の自信を勝手にもっている千石はプライドが傷付いたんだと主張しているが、要するに逆恨みであることは間違いない。
別に俺だって千石が白石を怨んでいる分にはどうでもいい。白石が迷惑を被ろうが俺には関係ないし、むしろもっとやれと思わなくもないんだ。
だがしかし、この場の空気を読んでしまえば厄介事に巻き込まれるのは目に見えているわけで、そりゃテンションも下がるだろう。

「俺にいい案があるんだ」
「さよか」
「君の協力が必要なんだよ」
「そないなこと知らんがな」
「君なら出来る、自信を持って!」

自信どうこうの問題ではないのをお前も承知の上だろう、と気持ちを込めて睨んでやるが千石はそれを華麗に無視した。
人の話しも反抗もすべて無視する気まんまんか、このやろう。
大体なんで俺なんだろうか。
確かに千石とは仲良くしている方だがそんな厄介事を頼まれてやるほど打ち解けた覚えはない。同じ学校の奴もいるだろうに、わざわざ何故俺を頼るんだ。

「あんなぁ、千石。俺は」
「あれ?千石クンと忍足クンやないか、何しとるん?」
「やあ白石くん!どったの〜?奇遇だね?」

なんだこの展開は。
いま、何が空気を読まなかった?白石か?それとも世の流れか?
正に断ろうって瞬間に普通諸悪の根源がタイミング良くくるか?
しかも巻き込む気全開の千石は俺の服を強く掴んで離す気配がない。
白石も白石でニコニコ話し掛けてくんな。

「いま丁度二人で白石くんの話をしてたんだよ!ね?」
「…せやな」

まあ、嘘ではないな。
なんてことを逃げるのを諦めた脳内で考えながら、取り敢えずナケナシの笑顔を浮かべた。
白石は話題に出されたことが意外なのか、目を丸くしながら首を傾げている。

「俺の話って、どんなこと言うてたの?」
「普通に白石くんはすごいよね、とか。部長の鏡だよね、とか。」

良くもまあ言ったもんだと飽きれ半分に感心をしていれば唐突に白石と目があった。
なんだなんだと凝視すれば目を逸らされ、よく分からない反応に首を傾げていると白石がまた俺に視線を投げかけてくる。

「忍足クンも…」
「?」
「忍足クンも言うてたん?」
「はい?」
「そりゃあもう!色々言ってたよ!!」
「は?」

何の流れだ。
俺も無理矢理白石を褒めなきゃならないってことか?ん?

「色々って……どんな?」
「それは…まあ…謙也の話しで聞く通りのやっちゃなぁ…とか……」

苦し紛れに出した従兄弟の名前に俺は心の中で謝りながら白石に恐る恐る視線を向ける。
しかし俺達は練習中にこんな所で喋っていて良いのだろうか、ってまともな疑問も浮かんだがまともで居ればいるほど辛くなるのでその考えはそうそうに捨てた。
どうせ千石のラッキーがあれば何だって都合よく片付くのだ。交通事故すらコミカルに片付けられる超人にこれ以上突っ込む気力はない。

「せやの?なんか嬉しいわ!俺、忍足クンには嫌われてるんかと思っとったんで?」
「まさかまさか!忍足くんは白石くんのこと大好きだもんね〜?」
「は!?」

なんだ千石。お前自分のウサ晴らしの為に俺を犠牲にする気満々か!!
最低だ!
意味分からん!

と、悩内でテンパっていた時間は大してあったわけではない。俺は瞬時に切り替えたつもりだった。
だが千石相手にその一瞬は大変命取りになる時間である。

「良かったね、忍足くん!これで晴れて二人は友達だ!」







苦手な相手:リベンジ

(扱いきれない相手)






END

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