「あの二人ラブラブで羨ましぃわ〜。アタシも海堂くんとあんな風にいちゃつきた〜い」

「浮気か!俺がいるやろ!」


いつものノリでツッコミながら俺は小春が熱い視線を向けている(俺以外をあんまり見て欲しくないんやけど)二人組に意識を向けた。
片や我等がテニス部の部長さん
片や天才二年生

二人は誰もが認める実力の持ち主であり、誰もが認めるラブラブカップルである。この二人は男同士の恋愛にツッコミを入れる愚か者がいないこの学校で正に順風満帆な生活を送っていた。
そのお陰と言うべきか、もはや二人のことはテニス部に限らず多分全校生徒が知っている。
(いや、それは言い過ぎか……少なくとも金ちゃんは知らんな。)
とにかく、隠す気が有るのか無いのか二人揃えば常に幸せオーラ全開でいちゃついているものだからどんな鈍感も気づいてしまうわけで(俺と小春のラブラブっぷりには敵わんけどな!)謙也なんかは目の毒やー!とか何とか叫んで毎度無駄にスピードスターの実力を発揮してたりする。

アイツ、初やからな。
財前はその反応を面白がって余計に所構わずになってるし。白石に悪気はなくとも財前は間違いなく敢えて人目につく場所で見せ付けている。

「せやってユウくん可愛くないんやもん」

「俺は可愛くなくていいんや!小春がラブリーでキュートなんやからな」

「死語やで死語」

「小春ぅ」

「懐くなや一氏!」

謙也は異様に純情やからものっそい嫌がっとるけど、俺はなんとも羨ましい限りだと思う。
こうやって俺が冷たくされてる横でも構わずラブラブしてるし。小春はちょっとツンデレやからあんまり抱き着かせてもくれへんのに。(でも小春はそんなところもかわええねんな〜)

だけど許されるなら俺もいつだって小春に抱き着いてたいわけ!

「小春と一氏はほんまに仲ええな」

「あら、蔵りんと財前ちゃんには敵わないわよ〜」

俺と小春の攻防でようやく他人の存在に気がついたのか、白石がふわふわとした笑顔で小春をみた。小さく舌打ちをした財前を俺はとりあえず睨んどく。
邪魔すんなオーラをあれだけ隣で出してんのに白石もよく気づかないもんだ。小石川とかなら胃が痛いとか言いだしそう。
アイツも謙也同様で恋愛には不慣れだから財前相手にだいぶ手を焼いてるもんな。

「いや、俺と財前はそーいうんやないって」

「恥ずかしがっちゃってかーわいいんやから」

「そ、そんなんとちゃうって」

俺が一人で思考を巡らせている間にも小春と白石は女子顔負けのピンクオーラ全開で仲良く喋っている。
(正直言って可愛い可愛い言ってる小春が一番可愛いわ)って俺が思ってるノリで財前も間違いなく思ってるんやろな。
顔のにやけで一目瞭然や。

気持ちはわかるけど財前があそこまで表情崩しとるとなんや新鮮や。ポーカーフェースは何処に忘れたんだか。
幸せそうでなによりと言うべきか、見せ付けんなと怒るべきか。
俺には判断しがたい……ってかどうでもええな。うん。

小春が微笑ましくて幸せになれるって言うてるから俺はそれで十分や。
例え謙也が迷惑被ってても、小石川が胃を痛めてても、俺には関係あらへんし。

「ユウジ先輩顔がめっちゃキモいんで部長のこと見んで下さい」

「キモイて人に言える顔してへんぞお前!同類やろが!大体俺は小春以外見えとらんわ!!!」

「自分のキモさを認めるとこだけ男らしいっすね」

後はこの捻くれた性格さえ治ればほんまに迷惑もなくていいんやけど、そこまで要求するんは我が儘ってもんだろうか。

いや、相手がこれだけ我が儘なんだから多少の我が儘を言ったとしても誰も咎めんやろ。
財前の自由奔放さを笑って許せるのは頭が沸いてる部長様と春の妖精野郎と師範ぐらいや。俺には到底無理。

「ユウくん、財前ちゃんとケンカしたらあかんて言うたやろ!」

「仲良しやで!ケンカなんてしとらん!」

「ユウジ先輩がいじめるー」

「虐めとらんやろが!」

でも小春が仲良くしろ、って言う場合のみイレギュラーで仲良くしたったりもする。
なんせ俺は小春至上主義や。こちとらお前らがバカップル言われる前からバカップルやっとるんじゃボケェ。
元祖どころか現役やで!

「財前と一氏は仲ええんやな」

意外やな、って言いながらも白石がほんの少し寂しそうな顔をすればどんなに自由奔放で唯我独尊な自分勝手財前でも優しい顔して迷わず白石の側に移動する。
白石だけが財前の特別で、バカみたいに愛しあっとるのをこんな時に死ぬほど見せ付けられるのだ。


「気色悪いこと言わんといて下さいよ、アレと仲良しやなんてありえへんです」

「コラ!そないなこと言うたらアカンて……でも、おおきにな」

「どういたしまして」

イチャイチャ、ラブラブ
ニコニコ、ベタベタ

あー
少しだけ謙也の気持ちが分かったかもしれん。
これはちょっと……胸やけするわ。

あと、なんやちょっぴり、むずむずする。

「小春はあの二人が微笑ましいん?」

「せやな、微笑ましいし、幸せ感じんの」

幸せ
小春は幸せなんか、あの二人をみとるだけで?
白石と財前だから?

「謙也の気持ちもわかるけど、小春が幸せになる気持ちもわかんねんなぁ」

うん。
白石と財前だから
微笑ましいんや、多分

「あら、ユウくんも大人になりはったわね。惚れなおしちゃう」

「ほんまか!」

「調子に乗らんかったらね」

だって普段から素直になることに不器用な二人だから、恋愛を通じて素直になることを学んで、甘えることに少しでも慣れたらええなって思うのだ。
小春以外に興味のない俺が思うんやからきっとみんなそうなのだろう。
だからほんの少し周りが優しいんだ。

謙也だって文句を言いながらも笑っとるもんな。
(迷惑なのは迷惑なんやろうけど、)

「あ、そろそろ準備せな」

「もうですか?まだ全然きとらんしゆっくりしましょーよ」

「あほ吐かさんの!ダラけたらアカンで、ほら、財前も一緒に行く…」

「……手でも繋いどきます?」

「……………金ちゃんが来るまでな」


胸やけとか
胃もたれとか
むず痒い感じとか

全部混ぜ合わせてわけわかんなくなったくらいで丁度良く微笑ましくなる絶妙さが肝心。
取りあえず胃と心臓は強靭なやつを準備せよ、ってか。


「俺らも手ぇつなご?」

「ユウくんは冗談が好きやな〜?」

「小春ぅうぅぅ」


なんや、
今日も平和やなあ









キミに幸あれ
(キミらに幸あれ)
(ほどほどならね)


END


遅くなって申し訳ありませんでした!
こちらのミスで長い間待たせてしまってすみません。気づくのも遅くなってしまい、結果的に何ヶ月も待たせてしまいました。
不甲斐ないばかりです。

リクエストされました光蔵で四天メンバーからみた光蔵との事でしたので今回はいつもの謙也くんではなく一氏で書いてみたのですが、若干一氏中心すぎたかもしれません。
なにかありましたらいくらでも追加リクエストして下さい!何度でも書きますから!


本当に本当に申し訳ありませんでした。
不甲斐ないサイトですがこれからもどうかよろしくお願いいたします。


遅くなりましたが、リクエストありがとうございました。



麻生マテリ


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -