カシャ、カシャ、と一眼レフ特有のシャッター音が屋上に響く。
「…良いことありそうな空です。」
そこに写すのは広大で綺麗な空。
あえて真っ青とは言わない。僕は真っ青とは思わないから。
日によって、気分によっていろんな色に変わる気がするから。
「…まぁ今日は青、かな。」
そんなことを呟きながら屋上を後にする。
今は放課後。教室に人影はなく、僕の鞄だけがぽつりと一つ佇んでいる。
と、開いている窓からキィン…と甲高い爽快な音がする。
「…もうこんな時間か。練習始まってるなぁ。」
僕の教室からはグラウンドが見える。部活動の様子が伺えるのだ。いつもの様に窓を閉じたままシャッターをおろす。
「……あっつ…」
せっかくいい気分で写真を撮ってたのに、ぽたりぽたりと汗が滴って不快な気分になっていく。
「…くっそ……」
ぼそり、と呟いて窓を開ける。窓を開けるのは嫌い。…だって、気付かれちゃうから。
「まぁ、しゃあないか……」
汗がひくまで待とうと外を見るとぱち、とある人物と目があった。
汗を流しながらふ、と優しく笑う野球部員。
「…っ」かぁ、と不覚にも赤くなってしまう。
ちくんちくんと痛む胸。
この感情が何なのか、僕は知ってる。
くるくる変わる君の表情に
僕の心はころころ揺れる。
そんな考えを吹き飛ばすように僕は空を見た。
「…さっきまで青かったのに」
焼けるように真っ赤で
包むような橙色で
沈みかける太陽は空を染めていく。
まるで僕の中の君みたいだ。
「…くそ(何を考えてるんだ、僕は)」
カメラを構えた。
ふと、カメラの画面のオートフォーカスという字が目にはいった。
「…(僕のオートフォーカスは、君だけに)
…なんて、馬鹿だな、僕は」
オートフォーカス
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