カツカツと颯爽と歩く人物。ずっしりと重そうな学生鞄をリュックの様に背負い、
右手には赤いフィルムの様なシート。
左手にはずらりと英単語の並んだ冊子。
極めつけは英語のリスニングをしているのであろうイヤホン。

靴を見るかぎり三年生なのだろう。
誰が見ても、明らかな勉強スタイルである。


「(……下線部2の単語の品詞を答えよ……たしか、動詞…か?)」


一応周りは見ているのだろう、きちんと人にぶつからず歩いて行く。


その人物が向かう先は食堂。昼ご飯を食べに来たのだろうか。


かたん、と座り、一時停止ボタンを押して、ご飯を選びはじめた。
少しすると頼んだ鯖定食が来たので食べつつ勉強を始める。

10月のこの時期、三年生はマナーは悪いが仕方がなく勉強せざるをえないのだ。
ましてこの人物、この学園では特待C〜Sあるうちの最上級、授業料全額免除の特待Sランクだ。…とどのつまり、金持ちでは決してない。
そのためこの学園の大学を目指すためには再びSランクの特待を取らなければならないのだった。


…と、途端に耳をつんざくような悲鳴があがる。

「……(やっぱり、もうすこし早く起きるんだった。)」

どうやら、王道大好きなら分かるであろう、生徒会の登場のようだ。

「なに、あのオタク!!」
「いやああ!!」


……どうやら、王道君が共にいらっしゃった模様。

「……ちっ」

あまりの煩さに舌打ちすると、付近の一、二年は瞬時に静かになった。

「あーっ!!!!多季!!」

一段と響く声。…お分かりだろうが、王道君だ。

「なんだよ!!食堂行くなら言えよな!親友ほっとくなんて、最低だぞ!!!」

「…(音量↑)」

「…おい!!聞いてんのか!!?」

ぐいっとイヤホンを引っ張り取る王道君。

この時皆は心の中でユニゾンした。

(((ちょ…おま!!この時期三年に絡んだら…!!)))


ぷつん。

主人公…もとい多季の何かがキレた。
そう、彼は温厚だった…はずだった。

「……っせえなぁ!!!期末直前で必死に勉強してんのわかんねぇのか!!?あ"ぁ!?三年はこの試験にかかってんだよ!!
呑気な一年坊主は黙って寮帰れや!!」


しん……
と厨房すら静まり返る始末。

王道君はぽかーん。
周りは唖然。

彼はそのまま食堂を後にした。
受験前の三年生に話しかけてはいけないという言い伝えが出来たのは言うまでもない。




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