「うううさっぶ…………」


ぶるる、とちょうど目線の高さにあるゴーグルが寒さに揺れる。


「浜野くん、マフラーは?」

「ん?あー……穴あいたから、すてたんだよなぁ…」

「そりゃ、寒いですよ……」


完全防備でコートも着てる俺に比べて浜野くんはいつもの学ランのみ。


また会話が途切れて、はぁ、と白い息が空気に溶け込む。

「…(寒いな…)」

と、コートのポケットにこつんと手袋に当たる固い感触。

「…飴。」

「あ!いーなぁ速水…もいっこある?」

「ありますよ。」


にこりと笑って飴の袋を破ろうとする。…が。

つるっ

「わ、と!」

かつん!と地面に落ちてしまった飴。

ひょい、ばりっ。

「ほい!」

ずずい、と目の前に出してきたのは先程落とした飴の中身。

「んむ、……ありがとうございます。」

「もいっこは?」

「あ、はい。」

再びばりっと袋を破り今度は自分の口へ運ぶ浜野くん。ちらりと見た指は寒そうに真っ赤で。

「……手、出してください。」

「ん?ほい!」

ぱっと目の前に出された手に自分の付けていた手袋を付け、自分のマフラーもぐるぐると巻いてやる。

「へ」

「どうぞ。」

「あ、ありがとう…ちゅーか、速水は寒くないん?」

「はっくし!…寒くないです」

「いや、でも「寒くないです」……んじゃ、」


一言そういってから、俺のすぐにかじかみ始めた手を掴み、自分の学ランのポケットに突っ込む。


「……寒くないっていってるじゃないですか」

「俺が寒いの!」

そう言ってにしし、と笑う浜野くんに俺はまたおちたらしい。


(浜野くん、あったまりたいですか?)
(うん?そりゃあねー……っくしょん!)
(…………海士、…くん)
(!!!!??……………ちゅーかまじ速……鶴正、俺殺す気…?)
(!!!!!…か、海士くんこそ…っ!!)


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