松風が来てから、雷門のサッカー部は変わった。反フィフスセクター勢力の中心として、試合に勝ち進んできた。俺としては別にもう内申なんてどうでもよくって、とにかくサッカーを楽しみたかった。だから別にもうフィフスセクターに加担しようとは思わなくなった。
……でも。一つ、俺にとって重大な問題が起こったんだ。
そう、南沢先輩が月山国光に転校してしまったこと。
彼は何より内申が大切だったらしく、反フィフスセクターの雷門から去り、月山国光でサッカーをしている。
ついこの間月山国光との試合があり、本気でぶつかってきた。
試合結果は雷門の勝ちだったが、先輩とも皆和解してよかった!……………みたいな感じで終わった。
正直俺としてはまっっったく!!良くない。ずっとFWで一緒にやってきたのに。それが相談も無しにいなくなる?酷すぎるだろ。
そんな怒りをふつふつさせていたら話すチャンスを逃してしまった。くそう。
「……電話、してみようか」
誰に問うでもなくぽつりと言った一言は案外俺の部屋に響いた。
「…(カチカチカチ、ピッ)」
アドレス帳から南沢先輩を見つけて電話をかける。
プルルル……ガチャッ
「…どうした」
……久しぶりに聞いた南沢さんの声に固まってしまった。
「…おい。」
二言目でやっと動きだす俺の口。
「……お久しぶりです」
「ん。」
「…今大丈夫ですか?」
「んー?……おう」
ばさりと本を閉じた音がする。
「……んで」
「倉間?」
「なんで、急にいなくなったんすか。……仮にも俺同じFWですよ。」
「………」
「……なんでっ…!!」
ちがう、俺が言いたいのはこんなことじゃ、
「…倉間。」
はっきりと意思を持った声で俺を呼ぶ南沢先輩。その声に、俺の勝手な口の暴走が止まる。
「…ごめんな。」
その一言に涙が溢れた。
「……せんぱっ……」
「…ふ、お前、泣いてんの?」
「うるさ、いっ…!」
「…ははっ…………っと、母さんが呼んでる。ごめん、切るな。」
「……っはい…………じゃあ。
好きです、南沢先輩」
彼が電話を切る直前、ぼそりと言ってやった。聞こえないように。
だって、腹立つんだよ。
まさかあれが聞かれてたなんて。まさかまた会えることになるなんて、思ってもみなかった。
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