予想外だったよ。
まさかあんな喧嘩するとは思わないしね。



「ディラン、パス!」
「へーい!……あれ?」

ディランが俺に放ったパスは、綺麗な弧を描いてフィールドの外へ飛んでいってしまった。

「ディラン!どこ飛ばしてるんだよ!」

FFIの練習中で、皆ピリピリしてたんだ。かといって八つ当たりして良いわけないのに、その時の俺は何を思ったのか少しキレ気味でディランに怒ってしまった。


「!……そんなに怒らないでヨ、カズヤー…」

へらりとしながら謝る様子はないディランに、俺のイライラが爆発してしまったんだ。


「…〜〜!!いっつもいっつも!ディランはへらへらへらへら!!だからミスするんじゃないの!?」

「!………カズヤ、「ちゃんとやれよ!!」………ウン…」


しょぼくれてしまったディランに目を向けることもせずに立ち去った。


「…マーク……なんでカズヤあんなにピリピリしてるんだい…」

「……さぁな、カズヤも悪いと思うけど、ディランもディランだね。」


そう意味深な事を言い残したマークの背中をディランは見つめる事しかできなかった。



その日の練習はボロボロで、俺もディランも技は決まらないしミスはするしで散々だった。



その日の夜。

「はぁ………(何で俺あんなぶちギレちゃったんだろ………でも、だって…)」

と、悶々としてたら部屋の外から人の声がした。

「…ほら、行きなよ」
「だっ、ちょ、待ってヨ…!!カズヤが簡単に許してくれるかわからないヨ!?」
「一之瀬なら大丈夫だって、ほら!」

土門とマークと、少し鼻声のディランの声がする。


…こん、こん

「……はい。」

「カッカズヤ!ミーだよ、ディラン!」

「……どーぞ。」

またツンとした答えになってしまった。

ガチャ……

「お、じゃまするヨ……」

「……何?」

ちろ、とディランの方を見て冷たく言い放つとぶわぁっとディランの目(サングラス?)から涙が溢れてきた。

「!?え、ちょ、ディラン!?」

「ソーリーカズヤ…!ミーはやっぱりカズヤもいないと駄目だヨ…!全部、全部治すから!また一緒にサッカーやろうヨ…!!」

ぎゅう、と抱き着くディランになんだか心が軽くなった気がした。

「…うん。俺もごめんね。ディラン八つ当たりなんて酷いことしちゃった…」

「いいんだヨ!ミーが悪いの!」

なんだか拍子抜けする仲直りだったな。


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