「かーたくーなになぁーってたぁ……」


「………なんで俺と三国のやつ歌ってんだよ」


「気分ですよ。…………三国さんって、歌上手いですよねー」


意外です。そういってさらりとピンクの長い髪を揺らす霧野。

「ああ、そうだな。あいつ一年の時は―……」

三国の話を始めたら始めたで途端にむ、となにか不満げな顔をしている。話をふったのはお前だ、と内心思うがそこは心のうちに留めておく。


「……まぁ三国も上手いが、お前もなかなかのもんだろ。」

に、と笑うとぱあっと明るくなる綺麗な顔。


「…ふはっ…ありがとうございます。……あ、そうだ、倉間がこの前…」

倉間は二人とも共通の友人のようなもので、この話だけは弾むのだ。

…と、また会話が途切れた。


「……南沢さん、ちょっと待ってて下さいね。」


そういってたたた……と何処かへ行った霧野。
なんなんだ、と寒空の下待ってるとすぐに戻ってきた。


「はい。」

そういって渡してきたのは好きなジュース。
教えた覚えはない気がするのだが。

「…なんで……」

「ふ、南沢さんのことならなんだってわかりますよ」

なんだか少々気持ち悪いことを言われた気もするが、単純な俺の頭は簡単にぼんっ!と思考回路がショートする。

「う…ぇ、おま、」

「ははっ!林檎みたいになってますよっ。…………あぁ、そうそう!


先輩も、歌上手いじゃないっすか。すっげぇ、えろかった」

にまり、と笑われてしまうともう限界。
体温は急上昇、くらくらめまいまでしてきた。


「うー………馬鹿かお前………」


「はい!南沢さん馬鹿ですよ?」


ちなみに、成績はいーんで。そういってまたにひ、と綺麗な顔も台なしに笑う。



「…………つくづく俺も馬鹿だよ」


霧野馬鹿だな、と内心悪態ついてぽそりと好きだ、なんて聞こえないくらいに愛を呟くとぐい!と頭を引き付けられて

「……好きですよ、先輩」

そういってちゅ、と額にキスを落とされた。

「……」

む、と足りないと言外に言うと無言で手を引かれて霧野の家に連れていかれた。








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3/10蘭南の日
蘭京と迷った


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