はち
10分程走って、後ろにいた追っかけを振り切った。
「は、はぁ……まじありえね……」
木にでも登れば見つかんねぇよな。
近くにあった高めでよく生い茂った木に登る。
「お、絶景絶景。」
このホテルも山の上だから木の上に行っただけでかなりの広さの絶景を見ることが出来るのだ。
…と、遠からずな所から怒ったような声と高めのボーイソプラノが聞こえる。
……む、あれは。
「おい!離せよ!!なんだよお前ら!!」
「うるさいなぁ!黙ってついて来いよ!!」
……やっぱり、モジャ君だ。関わりたくない。
「ほら、こっちだよ!!」
「うわっ!!」
ぐいっと引っ張られて連れて来られたモジャ…もとい八雲君。手首を後ろ手に縛られてるようで、地面に倒れた。
おおう、近いよ君等。
「お前さぁ、最近調子乗りすぎじゃねぇの!!?」
八雲君の胸倉を掴み、ダンッと勢いよく僕の座ってる木に押し付けた。…そう、僕の座ってる木に。
「ぐっ………てぇ…!」
もちろん揺れた。……が、なんとか落ちずに堪えた。…とか思った直後。
「ほんと、自重ってことを知れよ!!!」
ヒュ、とガタイのよさ気な男が八雲君に殴りかかる。……と、いつ解いたのか縄の着いてない手を着いて、最小限の動きで避けた。
……勿論、拳は木に当たる。そして揺れるわけで。
「へ、………わっ」
ずるりと落ちる僕。
……どーしましょ?