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「うあー。やっぱり……」

 まるっきり棒読みな口調で言って、わたしは心の底からげんなりした。放課後の、社会科の資料室。その壁際に置かれた背の高い棚を見上げて、深々とため息をつく。

「少しは考えて欲しいんだけど……」

 センセイ。と苦い声で呟いて、わたしは手にした本と棚の上段とを見比べた。うん、ムリ。絶対ムリ。わたしの身長じゃ届かない。これは明らかな人選ミスだと思われます。

 視線を何度も本と棚の間を往復させてみるけど、棚が低くなるわけもなければ、わたしの身長が伸びるわけでもない。やれやれとかぶりを振って、わたしはとりあえず持っていた本を元あった机の上に戻した。

 蛍光灯をつけていても薄暗い室内に、わたしの足音だけがぱたぱたと鳴る。外は朝から雨が降り続いていて、いつもなら野球部の掛け声で賑やかな時間帯のはずなのに、こっちの気が滅入ってくるくらい静かだ。あー、イヤだな。早く終わらせて帰ろう。元々長居する気もなかったけど、一人で人気のない所にいると、つい変な想像をしてしまいそうだ。お化けとかお化けとかお化けとか。

 思わずぶるりと身を震わせて、顔をしかめる。そして内心で毒づいた。ホントに出たら恨んでやるからね、センセイ! 大体、わたしが今日の日直だったからって、か弱いちびっこに一人で資料室の整理させようとか無謀だから! 脚立ないと届かないから! 自分で言ってて虚しいけどさ!

 ちなみに日直は本来二人一組で、もう一人男子が一緒のはずなんだけど……その相手である曽根くんは放課後になると同時にさっさと部活へ行ってしまった。わたしは日誌を書いてたせいで出遅れて、先生に捕まってしまったのだ。ああもう、本当についてない。

 頼まれたのは、この資料室――正式名は『郷土資料室』っていうんだけど、ここに積まれたままの本を棚に片付けることだった。さすがに一応、分類くらいはしておいてくれたみたいで、後は本当に棚に収めればいいだけみたいなんだけど――それがわたしにとってはいちばんの問題だったりする。



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