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 思わずすっとんきょうな声をあげたら、戻ってきた他の奴らの視線が集まった。うわ居心地悪い! でも、それに構ってる暇はない。間宮は言うだけ言うと、何事もなかったかのような足取りでこの場を去ろうとしていたのだ。わたしは慌ててヤツを呼び止める。

「ちょっと待って!」

「ん? いらない?」

「や、いらないってわけではない、けど……」

 こちらを振り返って首を傾げる間宮に、もごもごと言い淀むわたし。だって、珍しいものだし。萎れかけでも可愛いし。いつもみたいに、つっけんどんな態度で突き返すのは勿体ない気もするし――と、四葉と間宮の顔を交互に見やる。それから訊ねた。

「いいの? あんたが見つけたんでしょ?」

「いいの。お前にやろうと思って探したんだから」

「……へ?」

 あっさりとした口調で答えを告げられて、わたしは固まった。何か、今、とても気恥ずかしい科白を聞いたような気がしたんだけど。えーっと?

「だからー」

 固まったまま、それ以上のリアクションをしないわたしに呆れたのか、間宮は苦笑しながら口を開いた。

「一人でマネジ頑張ってる藤原さんに、俺なりの感謝の印。気に入ったんなら貰っといて」

 他にも色々、世話になってるし――と嘯くような口調で言って、また笑う。だけど、その目の奥に微妙な揺らぎを見つけてしまって、わたしは軽く眉根を寄せた。

 間宮の言った『色々』に含まれているのは、部活外のこと。わたしとヤツとがお互いに、不本意ながらも親しくなったきっかけ――間宮が初璃に失恋した一件について、だろう。ということは、つまり。

「今更、口止め料?」

 確認するようにして問うと、間宮は心底厭そうに顔を歪めた。

「違うっての! お礼だって言ってんじゃん」

「でも、お礼されるようなことなんてしてないし」

「俺は助かってますから」

 ――選手としても、友達としても。

 やけにきっぱりと言い切られて、わたしは居心地悪く身動いだ。間宮のこういう態度は心臓によろしくない。普段の軽い物言いとのギャップが激しすぎる。急に気まずくなって、わたしは何となく黙りこんだ。何て返せばいいんだ、こういうとき。

 途方に暮れた気分で、四葉を見つめる。幸運を運んでくるらしいそれは、見ているだけで心が和む。これを探してくれたんだと思ったら、ふと口許が綻んだ。うわ。ガラにもなく、嬉しいかもしんない。そう思った途端、すんなりと口から言葉が零れ落ちた。



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