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 ――あたしは魔女としては半人前なの。

 他人から賛辞をもらった後、いつだってリィはそう言うんだ。冗談めかして苦笑して。そして、時には自嘲するような笑みを浮かべて。箒に乗って、自在に空を飛ぶ。それが未だに出来ない自分は魔女として半人前なんだと――リィはそう思ってる。

 何をもって一人前の魔女だって、他人から認められるのか。そして本人も認めることができるのか。そんなこと、俺は知らない。でも、普段はあまり小さなことにこだわらないリィがここまで気にしてるんだから、それなりに重要なんだろうなとは思う。だけど、その反面で俺はそこまで大したことじゃないだろうとも思うんだ。だって、リィは本当にすごいんだから。

 魔法なんか使えなくたって――魔女なんかじゃなくたって、リーリエって女の子は凄い子だ。強い子だ。実の親の記憶はなく、唯一の身内だったお師匠さんを亡くしてリィは一人になった。だけど彼女はこの街にやって来てから、「寂しい」なんて弱音を吐いたことは一度だってない。泣いたこともない。彼女が弱音を吐くのはただひとつ。空が飛べない――普通の魔女なら簡単に出来るらしいそれが出来ない、その悔しさやもどかしさでリィは落ち込む。それだけだ。それ以外ではいつだって、リィは笑ってる。背筋を伸ばして、自分の仕事をしっかりこなして、その上他人の面倒まで甲斐甲斐しくみてくれる――そんなお人好し。

 自他ともに認める生活力のない俺は多分、リィがいなかったら今頃またぶっ倒れていることだろう。飛竜乗りの仕事はハードだし、俺は仕事に夢中になると他のことは全部おざなりになっちまうタチだから、ほんとリィと知り合えたことは幸運だった。……って、こんなこと言ってると、まるで俺がリィを家政婦みたいに扱ってるように思われるかもしれないけど、それは断じて違うから! そうじゃなくて、つまり、俺が言いたいのは。

 リィは魔法以外にも、俺には出来ないことがいっぱい出来る。それだけで俺は彼女を尊敬してるんだってこと。魔女としてのリィも確かに凄いと思うけど、でもリィの凄さっていうのはそんなところばっかじゃないって、俺は思ってるんだ。当のリィ本人にはそういうの、なかなか伝わってないみたいだけど。



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