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 周期的というほどでもないけど、それは必ずやって来る。リィが空を見上げてはため息をつく日々。そんなときのリィは普段の強気な態度も影をひそめて、別人みたくおとなしい。ま、根本から性格が変わるわけじゃないから、俺に対する手厳しい態度はそのままなんだけど。でも、そんなときのリィのことを俺は好きじゃない。――だって、ちっとも笑わないから。

 リィの顔はリィの心と、まっすぐ繋がっている。怒ってるときは魔物も裸足で逃げ出すんじゃないかってくらい、すげー迫力あるし。逆に機嫌がいいときは、すっげーキラキラしたカオで笑ってる。目の前に落ち込んでる人間がいたら、思いっきり背中をひっぱたいて、半ば無理やり前向きにさせちまうような――リィはそういう得体の知れない力の持ち主だ。だから今みたいにリィ自身が沈んでると、俺はひどく居心地の悪い気分になってしまう。

 そりゃリィだって人間だし、落ち込んだり、悩んだりすることぐらいあるだろう。いくら普段から強気で勝ち気で、選ぶ手段が過激な魔女様だとは言っても、リィだって普通の、年頃の女の子だってことには違いない。――多分、おそらく、きっと。

 そのことを俺は頭ではちゃんと理解しているつもりだ。だから、こういうときはそっとしておくか、求められたときに話を聞いてやればいいんだって。それが隣人としての――あるいは友人としての、正しい距離の取り方なんだとも思ってる。けど、それ以上に俺はリィの落ち込む姿を、ただ見ているだけなのは厭だった。理由なんてよく分からない。そういう理屈っぽいこと抜きで、とにかくイヤだった。我ながらガキくさいとは思うけど。

 リィは俺より年下だけど、立派な魔女だ。派手な魔法は得意じゃないけど、それでも俺みたいな一般人から見たら不思議な――まるで奇跡みたいな術を見せてくれる。薬草の知識も豊富だから、それで町の人を助けてやってるところも何度も見たことがある。実際、今のリィはそれで生計を立てているんだから、俺なんかよりよっぽど生活力があって、しっかりしてるんだ。そして、それは俺だけじゃない。町の人間のほとんどが認めていることで――だけど、リィだけはそれを頑なに否定し続けている。



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