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(……照れてる? 曽根くんが?)

 クラスでは女子に微妙に怖がられてる、あの曽根くんが。今、わたしの目の前で。

「……かわいい」

「はあ!?」

 思わず洩らしてしまった心の声に、曽根くんが眉をつり上げた。こっちを向いた顔にはさっきまでの照れた様子は微塵もなく、不機嫌そうな色が浮かんでいる。わたしは慌てて頭を下げた。

「ごごごごめんなさいっ!」

「……だから、どもりすぎだっつーの」

 少し間を置いて曽根くんが言った。その声に怒気はない。おそるおそる顔を上げて見てみると、彼は呆れたとばかりに肩を竦めてみせた。

「変なヤツだな、あんた」

「う……そうかな?」

「ああ」

『わたし=変なヤツ』説をあっさりと肯定した曽根くんに、わたしはがっくりと項垂れた。変なヤツ……変なヤツかあ。どうやらもう怒ってはないみたいだから、別にマイナスな意味合いではないんだろうけど。でも、この評価は嬉しくない。ああ、だけど今までのわたしの態度を省みたら、そう思われても仕方ないのかもしれない。非常に不本意ではあるけれど。

 恨めしい気分でちらりと曽根くんに目を向けると、ちょうど彼もこちらを見返しているところだった。――っていうか、むしろ見つめられてたと言うか、まるで観察でもしてるかのような、興味深げな面持ちでわたしを見下ろしている。

 次に目を逸らしたのは、わたしのほうだった。

「な、何見てるんでしょうかっ」

「何で敬語?」

 曽根くんがおかしそうに突っ込んでくる。だって曽根くんって、そういうふうにさせる雰囲気があるんだよ! また怒られたら嫌だから言わないけど!

「……びくびくしてんのに」

「へ?」

 続けてそう言われて、わたしはぱっと顔を正面に向けた。――と、やっぱりこちらを見たままの曽根くんと目が合った。だけど、今度は視線を逸らせない。逸らす気にもならなかった。曽根くんの表情がびっくりするくらい柔らかかったからだ。だからわたしはまた怒られるかもしれない可能性をすっかり忘れて、その表情に見入ってしまった。教室の中じゃ見たことのない、初めてのカオをじっと見上げる――と、曽根くんが苦笑した。



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