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「……熱い」

 一言呻いて、携帯を閉じた。とりあえずイヤーマフを外して、何とか熱を冷まそうと試みる。けれど、簡単に熱は引かない。急に忙しく働き出した心臓だって、全然落ち着く気配がない。これからバイトだっていうのに、こんなんじゃマトモに仕事が出来ないじゃないか。あのバカ。頭の中で彼を罵倒して、わたしは大きく息をつく。ああもう。何だか泣きそうだ。

 きっと、これが最後のチャンスだ。勇気を出して、素直になる。始める前から結果に怯えて、何も伝えられなかった後悔を捨て去るための。もしかしたらわたしが都合よく考えてるだけで、彼にそういう気はないのかもしれないけど。

 でも――もういいや。どんな結果が待っていたとしても。何もしないで逃げ出したままだった今日までのことを考えたら、ずっとマシだろう。そう思って、わたしは再び空を見た。穏やかなその色に、誰かさんの開けっ広げな笑顔を重ねて。

(……晴れたらいいね)

 彼とまた出会うなら、晴れたソラの下がいい。そんなふうに思いながら、わたしは小さく微笑んだ。

 とりあえず、何て返信しようかな。



  【終】



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