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 仕事上の上司でもある、保護者たちがよく言う科白。それをあたしが口にすると、龍斗はがっくりと項垂れた。気持ちは分かる。来年の今頃は、あたし達だって受験勉強で慌ただしくしているだろうし。そんな未来が簡単に想像できてしまう。だけど、それでも――あたし達がこの【仕事】を辞めることはない。ふざけた口調で現状を嘆いていたとしても、辞めることだけは有り得ない。

 あたしと龍斗は戸籍上、一応、従兄妹同士の関係だ。そして、住んでいる家も一緒。昼間は同じ中学校に通い、夜はこうして【仕事】に励んでいる。

 どうして中学生の子どもが、夜中にこんな物騒な仕事をしているのか。しかも保護者公認で。その疑問に対する答えはいたって簡単だ。これがウチの家業だから。ウチの血筋は代々、普通の人とは違った能力――いわゆる霊に対する五感を持って生まれてくる人間が多かったらしい。そして、そのほとんどが霊を祓う力――退魔力を持っている者で、遠い昔の時代から退魔師の生業を受け継いできたのだそうだ。つまり、あたしも龍斗も例外なくその力を持って生まれた、ひよっこ退魔師なのである。

 ひよっことはいえ、こうして現場を任されてる以上、それなりの自負と責任感を持ってやっているつもりだ。多分、龍斗もそうだろう。だけど、時々ふと思うことがある。いつまで、こうして門を塞ぎ続けなければならないのかと。

 人間の負の感情が鍵になっている以上、【魔瘴門】がなくなることはない。まして、これから年の瀬を迎えようというこの時期は特に酷い。あちらこちらで、ぱかぱかと面白いくらい穴が開く。もちろん笑い事じゃない。こっちの理由も簡単な話。先生も走るという師走の忙しさが、人の焦りを掻き立てるからだ。年が明けたら明けたで、今度は本格的な受験シーズンがやって来る。そんな時期に、ゆったり悠長に構えていられる受験生がどれほど存在するというのか。大なり小なり、みんな不安を抱えてる。それが門の出現回数に拍車をかけるのだから、あたし達がてんてこ舞いになるのも当然と言えば、当然の話だろう。



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