連鎖する僕ら 3
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 そんなふうに思われるなんてこと、あり得ないと思ってた。



(でも現実なのよねぇ……)

 ため息をついて思う。

 晩秋の朝。同じガッコの生徒がぞろぞろと列なって歩く通学路。わたし――藤原冴香はその流れに逆らうことなく、静かに歩みを進めていた。

 ここ何日かですっかり冷え込んだ空気に身震いして、首のマフラーを口許に引き上げる。あぁ寒い。寒いのは得意じゃない。どっちかというと夏のほうが好きなわたしに、この季節は鬱々とした気分を呼び起こす厄介な時季だ。野球が出来ない梅雨時と同じくらいに。

 もっとも憂鬱になっているのは、それだけが原因ではない。目下、天下の受験生なわたしにはいろんな意味で余裕がなかった。勉強だけでも時間が足りないって、珍しく焦りを覚えてたところに、とんでもない難題を持ちかけられてしまったからだ。

 それは、というと。

「おっはよー、冴香さん!」

 前触れなく背後から掛けられた声に、わたしは両足を止めた。そして全身全霊で無表情を作り上げ、ゆっくりと振り返った。

 そこに立っていたのは、わたしにその難題をふっかけてきた張本人。いつもヘラヘラ、能天気なセクハラ男。元・部活仲間の間宮哲だ。

「……おはよ」

 挨拶をされて返さないような礼儀知らずではない。だけどコイツ相手に愛想を振りまけるわけもなく、わたしは小さく朝の挨拶を口にした。それが引っ掛かったのか、間宮は少し眉根を寄せる。

「あれ、機嫌悪い?」

「別に悪かないけど……」

 ぼそっと呟いて、不自然にならない程度に目を逸らした。間宮が隣に並ぶのを待って、再び歩きだす。始業まで、まだまだ時間はあるから焦ることはないんだけど。

(走って逃げたい……)

 そんなことを考えてしまい、わたしは内心でため息をついた。もちろん、そんな素振りを表に出したりしない。その甲斐あって、間宮は特に気にした様子もなく相変わらずの軽い調子で話し掛けてきた。

「寒くなったよねー」

「そうね」

「勉強、進んでる?」

「……まぁまぁ」

 ごく淡々と応じて――ふと、おや? と思う。わたしは間宮に顔を向けた。


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