カップケーキ戦争 3 しおりを挟むしおりから読む目次へ ――そして放課後。 今日は火曜日。部活の日なので、わたしは窓際の席に陣取って外を眺めていた。 後輩たちの手前、手元にスケッチブックと鉛筆はあったけどそれらを使うことはなく。ただ脳をフル回転させて曽根と何から話そうか、そればかりを考えていた。 外を眺めているのはココ――美術室からは野球部の使用してるグラウンドが見えるから。曽根とつきあう前もつきあってからも、この習慣は変わることがない。 いつもなら部活が終わるのを待って、一緒に帰れる特別な日。だけど今日はどうなるだろうか。 午後の授業が始まってから、わたしは今日はじめて曽根を盗み見た。見た目はいつも通りのポーカーフェイスだったけど、ぼーっと窓の外を眺めていたり、得意な数学で当てられて珍しく答えに詰まったり。彼らしくないところを多く目にしたので、マミー達の言ってたことがまるっきり嘘というわけではなかったんだなと思った。 我ながらホント不謹慎だけど、何だか安心してしまった。だから今、わたしはずいぶんと落ち着いた気持ちで、そのときを待っていられる。もちろん、まったく怖くないわけじゃないけど。 何となく鉛筆を持って、紙に適当な線を引いてみる。そこに形を成していくのは、遠目に見える練習着姿の彼。紙の上と実物と両方交互に見ていると、ちょうど彼らが休憩に入るのが分かった。 そのとき、同時に視界に飛び込んできたのは。 「あのコ……」 わたしは立ち上がって、窓から身を乗り出した。視線の先をじっと凝視する。 そこにいたのは、今回の事の発端となった『カップケーキの彼女』だった。今日は他の子は一緒じゃないみたいで、一人のようだ。休憩中の部員のほうを窺うように立っている。 何だか胸がざわつくのを感じて、窓枠に手をかけたまま、わたしは逡巡する。けれど、すぐに意を決して窓枠を乗り越えた。 ――だって、気になるんだから仕方ない。 突然のわたしの行動に、後輩たちがぎょっとする。 「瀬戸センパイっ?」 「何やってんですかっ?」 「ゴメン! あと、適当にやってて!」 振り返りもせずにそう言うと、わたしはグラウンドに向かって走りだした。 * * * |