カップケーキ戦争 3
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 そう思い至って顔を上げると、ニヤニヤと笑うマミーと冴香の姿が見えた。その笑顔を見て、わたしもようやく笑えるような気になった。

 表情が和らいだのに気がついたんだろう。マミーがひとつ満足そうに頷いた。

「な? だから少し自惚れてなさい」

「ありがとう」

 微かに笑ってお礼を言うと、マミーがさらに付け加えた。

「どうしてもダメだったら、俺が慰めてあげるからー」

「あほかっ」

「ってぇ!」

 いつも通りの彼のおちゃらけた科白に、冴香の突っ込みが炸裂した。ベシッと勢いよくチョップされた頭を押さえながら、マミーが冴香に抗議する。

「ヒドイ冴香ちゃん! わざわざコッチまで来てやるほどのことですかっ」

「ちゃん付けすんな、やかましい! アンタがくっだらないこと言うからでしょう?」

「俺はマジメに」

「なおさら悪いわっ!」

 ずびしっとさっきよりも勢いよく手刀が振り下ろされて、マミーは今度こそ悶絶した。冴香は何事もなかったかのように元の席に戻ってくる。

 うーん……やっぱり何かこの二人、雰囲気変わったような気がするんだけどなあ。

 疑問に思ったけど、とばっちりを食うのは嫌なので何も訊かないことにしておく。それでなくても、今回も迷惑をかけ通しなんだから。

 軽く息をついて姿勢を正すと、冴香が頬杖をついてわたしを見た。そしてぶっきらぼうに喋りだす。

「とりあえず週末の試合までに、あのバカを使えるようにしてちょうだいよ」

「……ハイ」

 もとよりそのつもりのわたしは苦笑いして了承した。すると冴香はニヤリと嗤って、更に言う。

「あと今日の相談料にお昼のデザート奢ってね」

「あ、俺もー」

 女王・冴香様の命令にニコニコと賛同するマミーの声が聞こえた。デザートの一言で、すっかり立ち直ったらしい。

 目の前で機嫌よく笑う二人に、わたしが嫌だと言えるわけもなく。

 結局一週間。二人にデザートを奢って差し上げるという約束を交わすことになりました。

 うん、別にいいんだけどね。

 そう思いながら、今後はなるべく一人で頑張ってみようと決意を固めるわたしがいた。

 だって最近みるみる貧乏になってるんだもん、ワタシ。


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