カップケーキ戦争 3
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「曽根だけが悪いんじゃないもん……」

 そう呟いて、わたしはストンと腰を下ろした。そして考えをめぐらせる。

 どうすればいい? どれだけイライラさせられたって、わたしは曽根と一緒にいたい。だけど謝って、仲直りするだけの問題じゃない。何しろ彼はわたし以上に鈍い所がある人だから、口にしなくちゃ伝わらないことが山程ある。――でも、それを言ってしまったら。

「瀬戸さあ」

 思い悩むわたしに、マミーがのんびりと声をかけてきた。わたしはそっと目を上げて、彼を見る。

 マミーは両腕を組んだ姿勢で、何だか偉そうな口調で言った。

「キミは少し、自惚れなさい」

「……は?」

 意味が判らず、きょとんとしてしまう。見れば冴香も訝しげに眉をひそめていた。そんなわたし達に構うことなく、マミーは話を続ける。

「瀬戸は自分がタカに嫌われるんじゃないかって、そればっか怖がってるけど。タカだって同じだろ? 何が悪いかゲンミツに分かってなくたって、自分のしたことで瀬戸を怒らせたんだから」

 嫌われたのだと落ち込んでいても、おかしくない。

「わたし、キライになってなんか」

「でもタカは知らないよ。あれから話してないんだろ?」

 マミーはわたしの科白を遮って、平淡な口調で言った。それにわたしはぎこちなく頷く。すると、マミーはやおらニッと口の端を吊り上げて笑った。

「相手の思ってるコトが分かんなくて不安になってるのは、二人とも同じだろ? なら、そんなに怖がることないし。それに」

 浮かべた笑みを今度は全開にして彼は言った。

「俺からしてみたら、あの俺様野郎のタカをここまで右往左往させてる瀬戸ってスゲー存在なんだけどね」

「確かに……アイツのあんな姿を見る日が来るとは思ってもみなかったわね」

 冴香がそう言って、意地悪げに笑った。わたしは二人を見比べて、俯いてしまう。

 わたしのことで人目も気にせず困っている曽根がいる。それはちょっと気恥ずかしくて――だけど優越感を抱いてしまうと言ったら不謹慎だろうか。

 けれど、わたしが曽根のすることで一喜一憂するように、彼もそうなんだとしたら。

 それってホントにスゴいことだ。何にも勝る自信になる。



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